ご存じの方はご存じですし、今に始まったことでもないのですが、台湾メディアなどからは『宇宙一の不動産屋」と呼ばれる中国『恒大集団(Ever Grande)』(エバーグランデ)の件です。
中国語圏のネット上で『恒大集団』がいよいよ飛ぶのでは――という話が出回っています。
Money1では2020年11月に内部文書が流出し、債務が約13兆円もあることが分かった――という件でご紹介したのが最後でしたが、今回はネット上で出回っている『恒大集団』の危機的状況についてご紹介します。
『恒大集団』が直面しているという危機
『恒大集団』が直面している危機は以下の2つです。
2.お金が借りられない
お金がないというのは今に始まったことではなく、もともと『恒大集団』は莫大な借金によって事業を回してきました。資金の調達方法は考えられる全ての手段を講じています。
金融機関からの借り入れ、株式の上場(子会社・グループ会社)、社債・CPの発行、開発物件の割り引き販売などなど。先にご紹介したことがありますが、11%(しかも10億ドル)などというむちゃくちゃな高率で社債を発行した過去があります。
このような債務だらけの状態ですので、当然利子払いが大変なわけです。
ロールオーバー(借り換え)できるうちはいいのですが、できなくなったら満期償還で元本を返さざるを得なくなり、元本返済が不可能ならデフォルト(債務不履行)です。
そもそもロールオーバーも借金ですから、お金を借りられなくなったらできません。で、この借りられないという事態で『恒大集団』が飛ぶのではないか、といわれています。
借りられないのは自業自得
「2」の借りられない事態になっているのは『恒大集団』自身の責任という面があります。
2021年01月に1,300億元(約2.2兆円)の償還が迫り、どうするんだという危機がありました。
この際、1,300億元のうち「800億元」については、債権者に対してデット・エクイティー・スワップ(Debt Equity Swap)をもちかけて承認してもらい、切り抜けたのです。
デット・エクイティー・スワップというのは、債務と株式を交換することです。
つまり、本来であれば貸し付けたお金を『恒大集団』から返してほしいのですが、『恒大集団』には返済できるお金がなく、このままいけば飛ぶ――となったので、債権者は「取りっぱぐれるよりはましだろう」と、この債務を株式に交換するという話に乗らざるを得なかったのです。
『恒大集団』としては「してやったり」だったかもしれませんが、これはその場しのぎ。この後、『恒大集団』に資金を提供しようという投資家・金融機関が急減したとのこと。これは当然で、デット・エクイティー・スワップを使ってガラをかわすような企業にお金を貸すようなところは普通ありません。
また、不動産開発会社発の経済危機を避けるため、中国共産党当局がいわゆる「Three Red Lines」(3つの赤い線)」と呼ばれる規制を設けました。
これは不動産開発会社の財務状況を健全にするための規制です。
以下をご覧ください。
↑中国不動産企業がいわゆるスリーレッドラインにかかっているかをチェックした表組。『恒大集団』は一番上で3つともアウト
貸してくれるところもないようですが、『恒大集団』としてもこれ以上の借り入れを増やして「負債比率」を上げることができないのです。
もちろん、このスリーレッドラインは「2023年06月までにクリアすること」となっていますので、「それまでにクリアすればいいや」と負債を増やすかもしれませんが。
ですので、『恒大集団』が「お金がない」「お金を借りられない」となっているのであれば飛ぶのではないか――という話になるわけです。
また、だからこそ『恒大集団』は大幅な割り引きを行ってでも物件を販売して現金を調達しなければならないということです。
後で割り引き分を返すという販売スタイル
さらには、『恒大集団』が行っている不動産物件の「25%引き販売」「30%引き販売」にも仕掛けがあります。中国のネット情報によれば、これは日本人が想像する割り引き販売ではありません。
例えば、「100万元」の物件があり、「30%引き販売」だとすると「70万元」で売っているのかというと……そうではないのです。購入者は100万元支払い、後から(3~6カ月後)に30%がバックされるという仕組みです。
つまり、まず『恒大集団』にはフルプライス分のお金が入ります。それだけ今現金が必要ということです。
『恒大集団』についてはこのような話になっております。さて、この先いかなる展開が待っているでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)