韓国の造船会社が赤字続きで大変だという話は何度もご紹介していますが、さらに大きな苦難が襲いかかろうとしています。
韓国造船企業のビッグディールが進まない
Money1でご紹介したのが2019年01月ですからもう3年近く前ですが、韓国『現代重工業』は『大宇造船海洋』を買収することになりました。
これは2015年の造船大不況に端を発する韓国造船業界の構造調整の一環で、国策銀行『産業銀行』(『大宇造船海洋』の約56%の株式を保有)が承認することで実現に向かいました。
しかし、現在も『現代重工業』と『大宇造船海洋』は別会社であり続け、両社とも経営状態はよくありません。
なぜこのような状態かというと「結合審査」が進まないからです。
結合審査で「EUが拒否する」と報道
このような企業のM&Aには審査が必要になります。その世界的なシェアが独占的な状況になると困るからです。
必要な結合審査は案件によって異なりますが、本件の場合、EU、日本、そして韓国自身の公正取引委員会がまだ審査を終えていません。
で、この結合審査について、2021年12月11日、『Reuters(ロイター)』に興味深い記事が出ました。
「EUの公取委は『現代重工業』と『大宇造船海洋』の合併を認めないだろう」というのです。同記事の一部を以下に引用します。
韓国の造船会社『現代重工業』が、競合他社である大宇造船海洋株式会社の買収を計画しているが、両社が競争上の懸念を払拭するための改善策の提示を拒否したため、EUの反トラスト法上の拒否権が行使されることになったと関係者が語った。
(後略)⇒参照・引用元:『Reuters』「Hyundai, Daewoo tie-up faces EU antitrust veto, sources say」
EUの公取委は、合併してできる会社のシェアが圧倒的なものになるとして、これを拒否するというのです。
EUの公取委が正式に拒否したら、それでこの合併は雲散霧消します。
受注ラッシュで独占が良くなかった
2019年には、国策銀行が主導した「ビッグディール」などといわれたのですが、おしまいになる公算が高まりました。
「両社が競争上の懸念を払拭するための改善策の提示を拒否した……」というのは、『現代重工業』『大宇造船海洋』がシェアを下げる努力をしなかった(できなかった)、ということです。
これはそのとおりで、読者の皆さんもご存じのとおり「受注ラッシュのジャックポット」「中国を抜いて世界一」などと誇ってきたので、シェアが下がるわけはありません。
合併承認がかかっていますので、もう少し後先を考えて動いても良さそうなものですが。前年からの受注ラッシュによって、合併が阻まれるとしたら、全くの皮肉な結果といえるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)