韓国の造船会社が2020年末にカタールから100隻のLNG船を受注した、という話をご記憶の方も多いでしょう。
これは造船ドックを空けておいてくれというスロット契約だったわけですが、赤字続きの韓国造船企業にとっては慈雨のようなもので、「ジャックポット受注!」と韓国メディアでも大きく取り上げられました。
しかし、この契約によって造船会社が大きな赤字になるのではないのか、という予測が出ています。
先にご紹介しましたが、これは鋼板価格の急騰によるものです。そもそも安値で受注しているので、現在のように資源価格が上昇し、材料となる鋼板価格が上がってくると受注した価格では赤字になってしまうのです。
これまた先にご紹介したとおり、契約書には材料価格の上昇を船の価格に反映させるという条項が入っていなかったとのこと(以下記事参照)。そのため、実発注が増えれば増えるほど韓国造船会社は赤字となってしまう、というわけです。
興味深い数字が韓国メディア『朝鮮日報』に出ていますので、記事から該当箇所を引用してみます。
(前略)
船舶完成原価の20%を占める朝鮮用厚板は昨年上半期で1トン当たり10万ウォン、下半期では40万ウォンに上がった。2020年下半期と比べると、60万ウォン台から現在120万ウォン台と2倍上がった。その結果、朝鮮企業は昨年一斉に営業損失を記録した。
『韓国造船海洋』は営業損失1兆3,848億ウォンを記録し、『大宇造船海洋』と『サムスン重工業』もそれぞれ1兆7,547億ウォン、1兆3,120億ウォンの赤字を見た。
韓国3社は今年第1四半期にも数百~数千億ウォン台の赤字を出した。
ある造船業界関係者は、「現在の1隻当たり平均2億2,500万ドル(2,840億ウォン)のLNG船舶を2020年契約当時の価格である1億9,000万ドル(2,400億ウォン)に乾燥して引き渡さなければならないもの」とし「相当な損失が避けられない」と話した。
(後略)
注目ポイントは1隻当たりの金額です。
現在は「1隻当たり2億2,500万ドル」で、2020年には「1億9,000万ドル」でした。
差は「3,500万ドル」(約44億7,405万円)です。
韓国の造船業は利益率が5%といわれます。仮に現在の「2億2,500万ドル」で利益率が5%だとして、製造原価が95%かかるとすると、「2億1,375万ドル」です。
乱暴な計算ではありますが、「1億9,000万ドル」で契約しているなら、1隻納品するごとに「2,375万ドル」(約30億3,596万円)の赤字になります。
(すでに数隻中国にかっさらわれているのですが)これが100隻ですと、なんと23億7,500万ドル(約3,035億9,625万円)の赤字になります。
韓国の大手造船会社は大赤字を積み上げていますので、このような赤字事業はとても引き受けられません。
安値で受注してくるからそうなるんだ――といえばそれまでなのですが、「韓国造船企業が怖気を奮っている」と記事になるのももっともです。
さあ、これどうしますか?
(吉田ハンチング@dcp)