韓国は、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権になってから日本との関係を好転させようとしています。
自国に都合のいいようにしたいので、そこが決定的に日本の反発を買い、うまくいってはいませんが「好転させようとしている」のは確かです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権になってから、韓国外交部はやたらと1998年の「小渕-金大中 日韓パートナーシップ宣言」について言及しています。
日本の外務省が「日韓共同宣言 -21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ-」として、以下のURLで内容を公開しています。
2022年07月18日、日本の林芳正外務大臣と韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官の会談が行わた後に、韓国外交部が出したプレスリリースには、
□朴長官は、1998年「21世紀の新日韓パートナーシップ共同宣言(金大中・小渕宣言)」の精神と主旨に基づいて、両国関係を発展させていこうとした。
⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「日韓外交長官会談(7.18)結果」
が入っています。ただし、日本の外務省が出したプレスリリースには、小渕-金大中宣言についての言及はありません。
また、2022年08月15日(いわゆる韓国の光復節)に、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が行った演説でも、
日韓関係の包括的未来像を提示した金大中-小渕共同宣言を継承し、日韓関係を素早く回復し発展させる。
という発言があります。
以降も、韓国の外交部は「小渕-金大中宣言」について言及しています。
なぜ、かくも韓国が「小渕-金大中宣言」を基盤にしたがるのかといえば、同宣言の中に、
小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。
が入っており、日本の反省と謝罪の前提を基盤として日韓関係を好転させたいからではないでしょうか。
現在の目からすれば、当時の日本は韓国を甘やかす国でした。韓国を甘やかし、未来志向で共同宣言を行った延長線上に、「国際法を守らない韓国」と対峙する日本――という現在に至っているのです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は「韓国を甘やかす日本に戻れ」と言っているのに等しいのではないでしょうか。
それは小春日和のいっときの夢
「小渕-金大中宣言」は、「両国間の懸案事項がすぐに片付き、両国が未来に向かって結束していけるだろう」という理想を語った内容です。
「政治家が理想を語らないでどうするんだ」かもしれませんが、この宣言後に「最悪の日韓関係」といわれる現在に至っているのです。
韓国の現代史がご専門の木村幹先生が近著の中で、「小渕-金大中(キム・デジュン)日韓パートナーシップ宣言」について鋭い指摘をされていますので、ご紹介します。
少し長くなるのですが、以下に先生の著作から引きます。
※タイトル以外の強調文字、赤アンダーラインは筆者による
「日韓パートナーシップ」という一時の夢
この時期を少し遡る一九九八年の小渕恵三と金大中による「日韓パートナーシップ宣言」は、このような当時の雰囲気の産物であり、具体的な友好関係実現に向けた人々の動きもあった。
しかしながら、当時の私はそこに現れたあまりにも楽観的な「未来志向的」な言葉を、歯が浮くような、白々しいものだと感じていた。
日韓の間に横たわる歴史認識問題や領土問題が一朝一夕に解決するとは思えなかったからだ。
だが、少し裏を読んでこの宣言を、日韓両国政府が、潜在的な問題の深刻さを承知のうえで、これにあえて「臭いものに蓋をする」式に、意図的に見て見ぬ振りをして、やりすごそうとしているなら、それはそれでうまいやり方かもしれない、と考えていた。
事実、同じ時期に結ばれた「日韓漁業協定」で両国政府は、竹島問題を棚上げし、両国の間に「暫定水域」を設置して見せることに成功していた。
小渕も金大中も食えない政治家だ。
でも、政治的リーダーシップとは、あるいはこういうことかもしれない、と思っていた。
とはいえ、それは同時にアジア通貨危機直後の、つまり、韓国が経済的に大きな苦難のなかにあり、日本に強く領土問題や歴史認識問題で要求できないことがもたらした、一時的な状況であるかもしれなかった。
だとすると、いったいこのような小春日和のような状態を、日韓両国はいつまで続けることができるだろうか、そんなことを考えていた。
⇒引用元:『韓国愛憎』著:木村幹,中公新書,2022年01月25日発行,pp116-117
木村先生は当時から「このような小春日和のような状態を、日韓両国はいつまで続けることができるだろうか」と思っていらしたようで、慧眼という他ありません。
木村先生の言葉を借りれば、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は「小春日和のような状態」に戻したいと考えているわけです。
韓国が国際法を破ったりしなければ、それも可能かもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)