これまで43年間も『韓国銀行』に務めた李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が退任し、次期総裁には『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)アジア・太平洋局長の李昌鏞(イ・チャンヨン)さんが就く予定です。
尹錫悦(ユン・ソギョル)次期政権側が「文在寅大統領がなんの相談もなく決めやがった」と政争の具にして揉めないのであれば……ですが。
Money1でもご紹介したとおり、李昌鏞(イ・チャンヨン) さんは国会の人事聴聞会に韓国に帰国。さっそくメディアに捕まったようで、韓国紙には李昌鏞(イ・チャンヨン) さんへのインタビュー記事が出ています。
『韓国銀行』次期総裁ですのでその考えは気になるところ。注目の発言についてご紹介します。
李候補者は01日、ソウル中区富永太平ビルに設けられた人事聴聞会準備チーム事務所に初めて出勤する途中に取材陣に会い、「『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)中で最も速い速度で上がる家計負債を抑えるられるように『韓国銀行』が明らかな信号を出す役割をしなければならない」と述べた。
彼は「我が国の家計負債は短期的なリスク要因ではないが、中長期的に経済に大きな負担になる可能性があるため、連着陸させなければならない」と話した。
国内家計負債は昨年末基準で1,862兆ウォンで、最近3年の間に326兆ウォンも増加した。昨年1年間だけで135兆ウォン増えている。
李候補者は「(家計ローンが多い状態では)金利によって成長率が鈍化する可能性がある」とし「今後高齢化に伴い、年配の方が引退後、生活資金のために家計ローンを受け始めると、家計ローンの質も悪くなる可能性があるため、中長期的に解決しなければならない」
当然ですが、家計負債の異常な増加が問題としています。『韓国銀行』が家計負債の増加を止めるためのサインをはっきり出すべきとしていますが、当然ながら金利を上げていくということでしょう。しかし、韓国の場合、金利を上げたら上げたで所得の脆弱な家庭が元利返済にデフォルトする可能性もあり、難しいコントロールが求められます。おっしゃるとおりに「軟着陸」できるかどうかはお手並み拝見です。
もっとも軟着陸できなければ、南欧型経済危機になる可能性があります。
また、金利については以下のような注目発言があります。
(前略)
「(米韓で)金利が逆転する可能性は当然あるが、資本流出に与える影響は小さいと思う」と述べた。現在、韓国基準金利は年1.25%で、アメリカ合衆国(年0.25~0.5%)と0.75~1%差だ。
同候補者は「資本流出の可能性は金利だけでなく、為替変動に対する期待心理、経済全体の基礎体力などさまざまな変数に左右されるため、必ずしも資本流出が起きるとは見ない」
(後略)
合衆国が金利を上げていくことが見込まれ、そのため韓国も上げざるを得ません。資金流出を防ぐためです。お金はよりもうかる方に動きますので。
しかし、李昌鏞(イ・チャンヨン) 次期総裁は、たとえ金利の逆転が起こったとしても資金流出の可能性はさほと大きくない、と見ているようです。
理由としては、資金流出は金利だけで決まるのではなく「為替変動に対する期待心理」「経済全体の基礎体力」などのパラメーターによるから――としています。
しかし、韓国ウォンについては「為替変動に対する期待心理」の大きいですし、「経済全体の基礎体力」も……堅牢とは思えません。その認識で大丈夫なのでしょうか。
どうも、李昌鏞(イ・チャンヨン) 次期総裁は合衆国と韓国の金利差が逆転してもいい、特に甚大な影響はないと読んでいるとようです。来る05月に合衆国が一気に「0.5%」上昇させた場合、果たして資金流出への影響は小さいもので済むでしょうか。
李昌鏞(イ・チャンヨン) 次期総裁は「政府と対話しないことが中央銀行の独立性ではない」「総裁になれば家計融資の問題を金融委員会と一緒に見直す」とも発言。
政府と対話しないで勝手にやってますという中央銀行は、まあ普通はありませんのでこれは当然でしょう。ただ韓国の場合には、政府発行の国債を(直接)買えばいいと平気で言い出す議員がいますので注意しなければなりません。
李昌鏞(イ・チャンヨン) 新総裁の手腕に期待しましょう。
(吉田ハンチング@dcp)