先に韓国の国策銀行『輸出入銀行』が『サムスン』に私募債を引き受けてもらい、ドルを調達した件についてご紹介しました。
海外と取引をする国は「ドルがないのは首もないと同じ」で、韓国ならずともドルの調達には腐心するわけです。
韓国では「国策銀行が民間企業からドルを吸い上げる」だったのですが、「その国の中央銀行が市中銀行からドルを吸い上げる」ことだってあるのです(後述)。
タイムリーなことに2020年06月28日、『日本経済新聞』に「新興国にドル不足の試練 外貨準備、減少ペース最大」という記事が出ました。
有料会員限定記事なので引用できませんが、内容は記事のタイトルそのままで、新型コロナウイルス騒動のせいで新興国の多くが外貨を稼げず、そのため外貨準備が減少。その減少額は2020年04月に過去20年間で最大だった、というもの。
⇒参照:『日本経済新聞』「新興国にドル不足の試練 外貨準備、減少ペース最大」(有料会員向け記事です)
トルコに見る「外貨準備」の縮小
同記事の中では、特にトルコの状況がヒドイと紹介されています。
近々のトルコの外貨準備高の推移を見てみると以下のようになります。
『日経』さんが取り上げるのももっともで、2020年02月には「758億3,700万ドル」あったのに、04月には「500億7,000万ドル」と、なんと「257億6,700万ドル」(2兆7,609億5,680万円)※1も減っています。
新型コロナウイルス騒動で輸出が減少などのドルが入ってこない要因はありますが、トルコの場合、トリコリラ安を避けるため、つまりは「通貨防衛」にドルを突っ込んだため急速にドルがなくなったと目されています。
以下が直近の「月足」で見た「ドル・トリコリラ」のチャートです。ローソク足1本が1カ月の値動きを示します。
上掲のとおり、トリコリラは「なんだこりゃ」という通貨安に見舞われており、トルコの通貨当局が「ドル売り・トルコリラ買い」の防戦を行っていてもこの結果なのです。
で、とにかくドルが枯渇しているので、 『トルコ中央銀行』は民間銀行からドル(ユーロなどを含む外貨)を調達するというスゴイ手段を講じています。
2020年02月26日付け『Turkish Minute』の記事「Turkey allows private banks to lend more dollars to central bank: report」(トルコ、民間銀行に中央銀行へのドル貸しを認める:リポート)には次のようにあります。
Turkey raised the amount of dollars commercial banks can lend to the central bank through currency swap deals, a step intended to boost the nation’s foreign reserves, according to a copy of a directive seen by Bloomberg.
ブルームバーグが直接確認した指令書のコピーによると、トルコは商業銀行が通貨スワップ取引を通じて中央銀行に貸すことができるドルの額を引き上げた。
The regulation covers bank foreign-exchange lending to the monetary authority via short-term swaps, which were capped at 20 percent of their total FX market transaction limits, according to the central bank directive on Tuesday.
この規制は、火曜日の中央銀行の指令によると、短期スワップを介した金融当局への銀行の外国為替貸出を対象としており、その上限はFX市場での総取引限度額の20%であった。
⇒参照・引用元:『Turkish Minute』「Turkey allows private banks to lend more dollars to central bank: report」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
ワラでもいいから「通貨スワップ」を締結したい!
トルコは大変なドル不足(外貨不足)に陥っていますので、特にアメリカ合衆国とスワップラインを締結したがっていたのですが、これが不調。
FED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)は世界的なドル流動性を高めるために、2020年03月19日、9カ国の中央銀行と新たにスワップラインを結びましたが『トルコ中央銀行』はその中に入りませんでした。
で、思い出していただきたのが「トルコが韓国と通貨スワップを希望した」というニュースです。
Money1でも上掲で『コリアヘラルド』の「[独占]トルコ、韓国に通貨スワップSOS…コロナ19で経済難が深刻化」という記事をご紹介しました。
「韓国のウォンなんか入手してどうするんだろう」という点が大変疑問だったわけですが、外貨準備の急激な減少を見れば分かるとおり、(もし本当に依頼があったのだとすれば)「外貨ならもうなんでもいい」という「ワラにもすがる」心情からのことだったのでしょう。
というわけで、「通貨スワップ」なんて言葉が出るのは「本当にドルがない」状況に陥っているからなのです。
(柏ケミカル@dcp)