「韓国通貨危機」時、2008年10月30日、韓国はドル不足を解消するためにアメリカ合衆国のFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)とスワップライン※1を締結しました。
韓国の通貨ウォンが激安状況に陥り、合衆国に泣きついたためですが、このとき限度枠は300億ドル※2でした。
2005年に限度枠「30億ドル」で設定した「日韓通貨スワップ取極」(『日本銀行』の呼称)も、韓国に泣きつかれたため、2008年12月12日に「200億ドル」に枠を拡大しています(+既存の「ドル・ウォン」スワップの100億ドル)。
ちなみに『日本銀行』は本件について以下の文書を出しています。
日本銀行は、韓国銀行との間での円−ウォン貨のスワップ取極の引出限度額を、30億米ドル相当の円またはウォンから200億米ドル相当の円またはウォンに増額することについて、韓国銀行と合意した。この増額は、2009年4月末までの時限措置とする。
本スワップ取極は、国際収支危機といった状況にはない中での短期流動性供給を想定したもので、両国の中央銀行が、東アジアの金融為替市場の安定を図ることを目的として、2005年5月に締結したものである。
日本銀行は、今般の措置が、健全で適切に運営されている日韓両国経済に世界的な金融為替市場の混乱が及ぼす影響を緩和し、東アジアの金融為替市場の安定に資するものと確信している。
以上
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
このときの『韓国銀行』のお金の出し入れが面白いのでご紹介します。以下は韓国の「国際収支統計」の2008年10月~2009年12月の該当場所※3を切り出したものです。
⇒データ引用元:『韓国銀行』公式サイト「Economic Statistics System:ECOS」
2008年12月にドンと「103億6,090万ドル」、2009年01月にも「60億7,560億ドル」の負債が増加しています。計「163億7,560万ドル」。これが「スワップ」を利用した資金流入と考えられます。
「2008年時の合衆国と韓国で締結されたスワップラインでは164億ドルが調達された」とのことですが、このように数字は合います。
2009年04月から11月まで「–」の付いた巨額が並んでいますが、これはスワップの返済と考えられます。「–」(マイナス)が付いているのは、「その分だけ資金が流出した」(負債が減少した)ことを意味しています。
しかし、04-11月の合計は「185億4,010万ドル」(2009年12月の4億5,790万ドルも足すとざっくり「約190億ドル」)で、上記の計「163億7,560万ドル」と合いません。合衆国とのスワップライン以外で調達された約21億ドル超は12月・01月以外のセルに分散して入っていると思われます。
いずれにせよ、当時の『韓国銀行』は「大きく吸って~、はい、吐いて、吐いて、吐いて……」みたいなドタンバタンだったわけです。『韓国銀行』の総裁というのは大変な職業ですね。
※1韓国メディアは「通貨スワップ」、時に「通貨スワップ協定」と呼称しますが、紛らわしいのでMoney1ではFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)に従って「スワップライン」「ドル流動性スワップ」と記載します。本稿のタイトルだけはアンカーが韓国の表記に合せて「通貨スワップ」としています。
※2今回。2020年の新型コロナウイルス騒動によって締結されたスワップラインで限度枠は倍の600億ドルに設定されています。
※3面倒くさい方は飛ばしていただいて大丈夫ですが、「金融収支(Financial account)」の中に「その他投資(Other investment)」という項目があります。その「負債の部(Liabilities)」の「現金・預金(Currency and deposits, Liabilities)」に記録されています。もし自分でも確認したいという場合には、上掲の『ECOS』にアクセスしデータをダウンロードしてみてください。
(柏ケミカル@dcp)