韓国はやたらと「○○大乱」の多い国ですが、またしても「物流大乱」です。
2022年11月24日、韓国の『民主労総公共運輸労組貨物連帯本部』(貨物連帯)が全国16カ所で出陣式を開催し、無期限ストライキに突入しました。
↑ストライキを伝える『MBC News』の動画/YouTube『MBC News』チャンネル
これは、Money1でも先にご紹介した「2022年06月の物流大乱」の続編です。
物流が止まると大損する!
事の起こりは、2020年に導入された「安全運賃制」です。これは「運転手の適正な賃金」を保障するためのもの。過労や過積載、速度違反などを防止して交通安全を守り、必要な運賃を支払わない荷主には過料を科します。
この安全運賃制は期限付きで施行されたため、2022年末に効力を失います。
トラックの運転手などがストライキに参加したため、陸送の要を失い、多くの企業で「製品が出荷できない」「原材料が工場に到着しない」「建築現場に部材が来ない」といった被害が出ました。
↑完成した自動車を運ぶトレーラーが来ないので頭にきた『起亜自動車』が事務職や協力会社の社員を動員して運んだ話などは上掲先記事でご紹介しました。
2022年06月07日から始まったストライキは15日午前中には決着したのですが、経済的な損失は「1兆6,000億ウォン」と推計されました。それだけではなく、当然ですが「取引先との関係悪化」などのお金に現れない被害もまた甚大なものでした。
また決着は、政府が「安全運賃制を継続する」と認めたことでついたのですが(現在の安全運賃制は2022年末までの時限制度(サスペンデッド))、この延長には法的根拠が必要で、つまりは国会で改正を行わなければならないのです。
ご案内のとおり、国会は野党『共に民主党』が過半数を押さえている状況で、政府(与党『国民の力』)が約束しても通過させることができないのです。
年末で期限切れの制度がいまだ改正されないので、貨物連帯側が行動を起こしたというわけです。貨物連帯はまた「安全運賃制の対象品目拡大と運賃引き上げ」も要求として掲げています。
すでに無限ストライキに突入したのですが、なんとか早く終結させないと06月の二の舞です。
韓国政府はストに強行姿勢を見せた!
なんとかストライキをさっさと終わらせたい韓国政府ですが、強硬に対応する姿勢を見せています。
2022年11月24日、すなわちストライキ突入日に、韓国の国土部は貨物連帯の「集団運送拒否」に組合員2万2,000人のうち9,600人が出陣式に参加した※と明らかにしました。
※貨物連帯側では組合員数2万5,000人がストライキに参加し、1万1,000人が出陣式に参加したと明らかにしています。
政府が「集団運送拒否」という表現を使うのは、そもそも所属組合員が自営業者であるため、労働組合としては認められないという理由からです。
また同日、元喜龍(ウォン・ヒリョン)国土交通部長官は、関係省庁合同で対国民談話を発表。「深刻な危機を招くなら貨物自動車運輸事業法に基づく業務開始命令を発動する」と明らかにしました。
「何それ?」となりますが、「業務開始命令」というのは、貨物自動車運輸事業法第14条を根拠としており、
国務会の審議を経て業務開始命令が発動されれば、運輸従事者は直ちに業務に復帰しなければならない。
拒否する場合、30日間の免許停止処分、3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金という刑事処分を科すことができる。
というものです。
そもそも韓国はストライキが頻発する国ですが、左派政権が労働組合に阿って甘やかしてきたという経緯があります。
労働人口が減少してこの先は生産性を上げなければならないというのに、このような状態では生産性向上など不可能です。
韓国はどこかで労使協調路線に転換しなければならなかったのですが、結局できませんでした。その弊害は現在も続いており、これがまた韓国の将来を暗くしているのです。
韓国政府は「業務開始命令」を出して、今回のストライキ、もとい集団運送拒否を終わらせることができるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)