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【習近平vsバイデン】バイデンさんは本当に「台湾の独立を支持しない」と言ったのか

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2022年07月28日、アメリカ合衆国のバイデン大統領と中国の習近平総書記との電話会談が行われました。

先にご紹介したとおり、ペロシ下院議長が08月に台湾訪問をする予定で、中国側はピリピリした状態での会談となりました。

どうなったでしょうか。

バイデン大統領が「台湾の独立を支持しない」と強調した

中国外交部が公表した本件についてのプレスリリースが以下です。全文を和訳します。

习近平同美国总统拜登通电话
習近平バイデン合衆国大統領と電話会談

2022年7月28日晚,国家主席习近平应约同美国总统拜登通电话。两国元首就中美关系以及双方关心的问题进行了坦率沟通和交流。

2022年7月28日夜、習近平国家主席はジョー・バイデン合衆国大統領と電話会談を行った。 両首脳は、米中関係や相互の関心事について率直に意思疎通を図り、交流した。

习近平指出,当前,世界动荡和变革两种趋势持续演进,发展和安全两大赤字不断凸显。面对变乱交织的世界,国际社会和各国人民都期待中美两国发挥引领作用,维护世界和平安全,促进全球发展繁荣。这是中美两个大国职责所在。

習近平は、現在、世界では激動と変化という二つの流れが続いており、発展と安全保障における二つの大きな欠陥が表面化しつつあると指摘した。

世界が混乱する中、国際社会とすべての人民は、中国と米国が世界の平和と安全を維持し、世界の発展と繁栄を促進するために主導的な役割を果たすことを期待している。

これは、二大国の責任である。

习近平强调,从战略竞争的视角看待和定义中美关系,把中国视为最主要对手和最严峻的长期挑战,是对中美关系的误判和中国发展的误读,会对两国人民和国际社会产生误导。双方要保持各层级沟通,用好现有沟通渠道,推动双方合作。当前全球经济形势充满挑战。中美应该就宏观经济政策协调、维护全球产业链供应链稳定、保障全球能源和粮食安全等重大问题保持沟通。违背规律搞脱钩断链,无助于提振美国经济,也将使世界经济变得更加脆弱。双方要推动地区热点问题撤火降温,助力世界尽快摆脱新冠疫情,走出经济滞胀困局和衰退风险,维护以联合国为核心的国际体系和以国际法为基础的国际秩序。

習近平は、米中関係を戦略的競争の観点から捉え、定義し、中国を最も重要な敵、最も深刻な長期的課題と見なすことは、米中関係の判断を誤り、中国の発展を誤って解釈し、両国民と国際社会を誤解させることになると強調した。

双方はあらゆるレベルでコミュニケーションを維持し、既存のコミュニケーション・チャンネルを利用して両者の協力を促進する必要がある。

現在の世界経済情勢は、課題にあふれている。

中国と合衆国は、マクロ経済政策の協調、グローバルな産業チェーンのサプライチェーンの安定性の維持、グローバルなエネルギーと食糧の安全保障の確保などの主要な問題についてコミュニケーションを維持すべきである。

時代に逆行してデカップリングに取り組み、連鎖を断ち切ることは、合衆国経済の活性化にはつながらず、世界経済をより脆弱なものにしてしまう。

双方は、地域のホットスポット問題の撤回と冷却を促進し、世界が一日も早くコロナ疫病から脱し、経済停滞の罠と景気後退のリスクから脱し、国連を中核とする国際体制と国際法に基づく国際秩序を維持するよう支援する必要がある。

习近平重点阐述了中方在台湾问题上的原则立场。习近平强调,台湾问题的历史经纬明明白白,两岸同属一个中国的事实和现状清清楚楚。中美三个联合公报是双方的政治承诺,一个中国原则是中美关系的政治基础。我们坚决反对“台独”分裂和外部势力干涉,绝不为任何形式的“台独”势力留下任何空间。中国政府和中国人民在台湾问题上的立场是一以贯之的,坚决维护中国国家主权和领土完整是14亿多中国人民的坚定意志。民意不可违,玩火必自焚。希望美方看清楚这一点。美方应该言行一致恪守一个中国原则,履行中美三个联合公报。

習近平は、台湾問題に対する中国の原則的な立場に強調した。

習近平は、台湾問題の歴史的経緯は明確であり、台湾海峡の両岸が同じ中国に属すること、現状は明確であることを強調した。

3つの米中共同コミュニケは双方の政治的コミットメントであり、一つの中国の原則は米中関係の政治的基盤である。

私たちは、「台湾独立」の分離主義と外力による干渉に固く反対し、いかなる形であれ「台湾独立」勢力のための余地を決して残さない。

台湾問題に関する中国政府と中国国民の立場は一貫しており、中国の国家主権と領土保全を断固として保護することは、14億人以上の中国国民の確固たる意志である。

世論に反することはできない。

火遊びをすると、火が点く。

合衆国側がこれをはっきりと認識することを願っている。合衆国側は一つの中国の原則を遵守し、3つの米中共同コミュニケを実施する必要がある。

拜登表示,当今世界正处于一个关键时期。美中合作不仅有利于两国人民,也有利于各国人民。美方希望同中方保持畅通对话,增进相互了解,避免误解误判,寻求在利益交融的领域开展合作,同时妥善管控分歧。我愿重申,美国的一个中国政策没有改变也不会改变,美方不支持台湾“独立”。

バイデン大統領は、世界は今日、重要な時期にある、と述べた。

米中協力は両国民にとって有益であるばかりでなく、全ての人々にとって有益である。

合衆国は中国との開かれた対話を維持し、相互理解を深め、誤解や誤算を避け、差異を適切に管理しつつ、利害が一致する分野での協力を模索することを望んでいる。

合衆国の一つの中国政策は変わっておらず、今後も変わらないこと、合衆国は台湾の「独立」を支持しないことを改めて強調したい。

两国元首还就乌克兰危机等交换了意见,习近平重申了中方原则立场。

両首脳はウクライナ危機についても意見を交換し、習近平は中国の原則的な立場を繰り返した。

两国元首认为,这次通话坦诚深入,同意保持联系,责成双方工作团队为此继续沟通合作。

両首脳は、この通話が率直で深いものであったと考え、連絡を取り合うことに合意し、この目的のためにコミュニケーションと協力を続けるよう両者のワーキングチームに課した。

⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「习近平同美国总统拜登通电话」

この中国側のプレスリリースを見ると、ほとんど習近平総書記の発言です(以下参照)。

習近平総書記は「中国を最も重要な敵、最も深刻な長期的課題と見なすな」といっています。

中国共産党の姿勢からいって無理です。こう見なさざるを得ません。

国連を中核とする国際体制国際法に基づく国際秩序を維持するよう支援する必要がある」などと言っています。

国際法を破って平然としている国のくせに盗っ人猛々しいと呆れる他ありませんが、「国連による秩序」などと言及しているのは、自国に拒否権があって、都合の悪い決議が国際的な合意にならずに済むからです。

台湾問題については、合衆国に独立を認める方向に行くなと強く牽制しています。

この中国のプレスリリースによれば、バイデン大統領は「合衆国は台湾の『独立』を支持しないことを改めて強調した」となっています。

実際、合衆国は公式にはこれまでの中国に対するコミットメントを覆したことはありません。しかし、本当にそう言ったのでしょうか。

「一つの中国」の中身はなんでしょうか

ホワイトハウスもプレスリリースを出しています。報道官のブリーフィング資料によれば、台湾問題については以下の部分です。

(前略)
Third, they had an in-depth discussion of Taiwan. They discussed, you know, as they always do, areas of difference. And the two, I would say, on Taiwan had a — had a direct and honest discussion. President Biden reaffirmed the United States’ commitment to our One China Policy, guided by the Taiwan Relations Act, the Three Joint Communiqués, and the Six Assurances.
(後略)

第三に、2人は台湾について深く議論しました。いつもそうであるように、相違する部分について議論しました。

そして、台湾に関して率直な議論を行ったと言えるでしょう。

バイデン大統領は、台湾関係法、3つの共同声明、そして6つの保証を指針とする「一つの中国」政策に対する合衆国のコミットメントを再確認しました。

⇒参照・引用元:『White House』公式サイト「Background Press Call on President Biden’s Call with President Xi Jinping of the People’s Republic of China」

と書いています。ご注目いただきたいのは、「一つの中国政策」の原文です。「United States’ commitment to our One China Policy」となっています。

すなわち、「合衆国がコミットメントする我々の一つの中国政策」です。「中国の一つの中国政策」ではありません。

こういう解釈はいかがでしょうか。

合衆国がコミットメントするのは「我々の“一つの中国政策”」であって、「中国の“一つの中国政策”」ではない

というのは。

United States’ “one china policy”」が、「中国は中国本土だけを指す」という内容かもしれないからです。これだって「合衆国の一つの中国政策」です。


↑合衆国が考える「一つの中国」はこうかもしれません。

中国側は「バイデン大統領は台湾の独立を支持しないと言った」と書いていますが、「我々の一つの中国政策にコミットメントする」と言ったのではないでしょうか。

もちろん、「合衆国の一つの中国政策」も中国の言うとおりの「一つの中国政策」、すなわち「台湾と本土を合わせて一つの中国」かもしれませんが、状況によって中身を変更できる言い方をしているというのがミソではないでしょうか。

あと、バイデン大統領は、あちこちで失言を行う方です。本当に言っちゃったかもしれません。しかし、少なくともホワイトハウスの報道にはそうは書いてありません。

(吉田ハンチング@dcp)

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