韓国の造船企業は「再び受注ラッシュ!」それでも赤字「商売の根本がおかしい」

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韓国の造船業界がまた受注ラッシュに湧いています。

韓国造船企業のBig3は、

サムスン重工業
韓国造船海洋
大宇造船海洋

の3社です。

日本語の記事も出ているぐらいですので、読者の皆さまもご存知かもしれませんが、2022年に入っても造船受注は好調なのです。

例えば、『大宇造船海洋』は2022年08月10日、以下のような公示を出しました。


↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。

LNG運搬船:7隻受注
契約金額:1兆9,628億ウォン
直近の売上高:8兆3,113億ウォン
今回の受注の売上対比:23.62%

『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト

LNG運搬船を7隻受注したことを公示しています。すでに今期の売上は「8兆3,113億ウォン」に達しており、受注は非常に好調です。

実は、韓国造船会社Big3はこの時点で、すでに年間の受注目標の90%を達成しているのです。

問題はそのような受注ラッシュの中にあっても3社とも全て赤字であることです。

先にご紹介したとおり、『サムスン重工業』『韓国造船海洋』の2社はすでに2022年第2四半期の決算を出していますが赤字です。

●『サムスン重工業』
総売上:1兆4,262億ウォン
営業利益:-2,558億ウォン
当期純利益:-391億ウォン

●『韓国造船海洋』
総売上:4兆1,886億ウォン
営業利益:-2,651億ウォン
当期純利益:-1,056億ウォン

『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト

Big3のうち残っているのは『大宇造船海洋』ですが、こちらは日本の『INPEX』に約9億7,060万ドルの損害賠償を請求されており、これを決算に織り込んだと発表していますので、こちらも恐らく黒字になりません(ただしどのように織り込んだのか詳細な公示がないので不明です)。

さすがに韓国メディアにも「受注ラッシュでも全社赤字じゃないか」という批判記事が出るほどです。

例えば、『韓国経済』は2022年08月09日に「受注ラリーにも『赤字の泥沼』を迷う朝鮮3社」という記事を出しています。

なぜ赤字になるのか? 安値競争を韓国企業内でも行っている

韓国は造船業について「世界でもトップクラスの競争力を持っている」と誇っています。実際、上記のとおり受注は非常に好調なのです。

Money1でもご紹介しましたが、2020年の終わりから受注ラッシュが続いています。タンカー、LNG運搬船などの大型船は建造に2~3年かかります。2020年の受注はそろそろ納品して結果が出るはずなのです。出ないと困ります。

なぜ受注は好調なのに黒字に転換できないのでしょうか。

最大の原因は、韓国造船業の根本的な宿痾「安値で受けること」です。補助金がじゃぶじゃぶ入っている中国企業に競り勝ったりするのですから、その安値受注のレベルが知れようというものです。

安値で受注するので、薄利多売の商売です。タンカーやLNG運搬船の建造が薄利多売モデルというのが、そもそも商売の根本で間違っていると思わされるのですが、薄利多売であるため余裕がありません。

2020年から資源価格が急騰し、造船の主材料である鋼板価格が急騰。

それまでは韓国の鉄鋼メーカーに安値で鋼板を納品させていたのですが、さすがにそれも無理になりました。

鋼板価格の上昇をコストに反映したとたん赤字に転落し、それが現在も続いています。

ちなみに、赤字決算を発表した際には、「鋼板価格が値上がりしたので赤字になりました」と鉄鋼メーカーに責任を転嫁。これには鉄鋼メーカーも激怒。

怒った鉄鋼メーカーは「これまで何度も値上げを申請したのに受け入れてもらえず、その分のコストはウチがかぶっていた。今回やっと値段が上がったら、自社の赤字をウチのせいにするのか」と、造船業界の内幕を暴露してしまいました。

ことほどさように、韓国の造船企業はコストをカットして安値受注に励んできたのです。

また問題は、安値受注の叩き合いを同じ国の企業同士で繰り広げている点にもあります。激しい低価格競争がBig3内でも行われているのです。

このような自国内での過当競争は、かつて中東であった韓国建設企業同士の安値合戦を彷彿とさせます。あほらしいといえば、これほどあほらしいこともないのですが、結局中東の建設ラッシュは多くの韓国企業を破綻させ、蜃気楼のように消えたのです(詳細は以下の過去記事を参照ください)。

韓国は中東に進出してひどい目に遭った。最後は蜃気楼に……
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銀行が「RG」を切っているのも安値受注を促進している!

さらに、中東建設ラッシュ時代と相似形なのは、国策銀行『産業銀行』『輸出入銀行』が受注に対して「RG」を切っていることです。

RGというのは「Refund Guarantee(リファンド・ギャランティー)」の略で、日本語では「前受け金返還保証」と訳されます。

造船など完成まで時間がかかる事業については、発注主は受注業者に代金の一部を「前受金」として支払います。しかし、その受注業者が破綻したりすると、最悪の場合、前受金は帰ってこないわ、事業は完成しないわで発注主は大損をこうむります。

そのため、事業主が安心して発注できるように金融機関が「何かあった時にうちが前受金を返済しますよ」という、一種の保証を付けるのです。これが「RG」です。

RGを切ってくれれば、事業主も安心して発注できます。つまり、受注につながりやすいというわけです。

かつての中東建設ラッシュの際には、韓国企業は金融機関の保証を背景に(経験もほとんどないのに)中東で事業を大量受注しました。韓国政府も金融機関にどんどん保証を出すように圧力をかけたのです。

金融機関には保証料が入ってくるのですが、保証の乱発、安値受注の叩き合いが起こり、その結果、欠陥建設でクレームが頻発するようになって……韓国の中東建設ブームはひどい終焉を迎えたのです(上掲URLの過去記事を参照してください)。

韓国の造船業は、当時と全くの相似形です。

韓国の国策銀行はRGについて再検討しなければならないでしょう。RGが安値受注を引き起こしているともいえるわけで、受注しても結果、赤字になっているのですから。

結局「韓国の造船業」は立ち行かなくなるのでは……

――というわけで、韓国の造船業はなんだか袋小路のような状態になっているのです。

確かに受注実績好調ですが、仕事をしてももうかりません。ではなんのために造船企業を存続させているのか?です。

一つの回答は安全保障のため、です。自国で軍艦を造れるように残しておく必要はあるでしょう。しかし、このままタンカーやLNG運搬船をいくら安値受注しても立ち行かなくなるのではないでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)

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