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日中韓「財務相+中央銀行総裁」会議。なぜか韓国が喜ぶ「緊急時に使える融資制度」

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2024年05月03日、日中韓の財務相・中央銀行総裁会議が、ジョージアのトビリシで開催されました。『ADB』(アジア開発銀行)年次総会に合わせての開催です。

興味深いのは、CMIM(チェンマイ・イニシアチブ)の下で、緊急時の資金供給について新たなファシリティーを作ることについての基本合意がなされたことです。

これは「RFF」と呼ばれるもので、「Rapid Financing Facility」の略。自然災害など一時的外部衝撃による危機解消のため、事前・事後条件のない小規模・短期資金支援プログラムです。

2010年に多国間化された(マルチになった)スワップラインの仕組みであるCMIMを補完するものとして考えられたものです。「CMIMの下」というのがみそで、CMIMの縛りを免れるものではありません。

韓国メディアでは「新たな緊急融資制度の創出」と、なぜか喜んで報じていますが、韓国は利用することを考えずにASEAN諸国を助けることを考えるべきしょう(要はお金を出すことを考えるべき)。今回の共同声明にあるとおり、「Paid In Capital(支払った出資金額)による仕組み」ですので、韓国は資金を多く出す(多く出さなければならない)側なのです。

「先進国だ」と自称しているくせに、相変わらず「助けてもらうこと」ばかりを考えている妙な国です。

この新しいRFFでは、「freely usable currencies(FUCsと略す:いかなる国の通貨にも自由に交換できる通貨)を選択可能な仕組みとしたい」としています。通常のスワップラインの場合には、「自国通貨」と「相手国通貨」をスワップするのですが、RFFではハードカレンシーを融通してくれる(ようにする)というのです。

実現すれば、緊急にハードカレンシーが必要になりそうな国にとっては大変に助かる仕組みとなるでしょう。

韓国メディアがはしゃいでいる理由はよく分かりませんが、もしかして利用する気満々なのでしょうか。

以下に今回の会合後に出された共同声明の全文を引用します。

第24回 日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議 共同声明
財務大臣・中央銀行総裁会議共同メッセージ
トビリシ、ジョージア、2024年05月03日

1.われわれ、日本、中国、韓国の財務大臣・中央銀行総裁は、鈴木俊一財務大臣の議長の下、グルジアのトビリシにおいて、第24回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議を開催した。

2.われわれは、世界経済と地域経済の現状と見通し、リスクと課題への政策対応、ASEAN+3金融協力の進展について意見交換を行った。

2023年には、堅調な内需に牽引され、地域の成長が強まった。2024年には、内需、投資と輸出の回復、堅調な個人消費に支えられ、域内の成長ペースが加速すると予想される。

ASEAN+3の見通しに影響を与えるリスクとしては、短期的には、地政学的緊張、世界的な商品価格と輸送コストの高騰、主要貿易相手国の成長鈍化、さらには外部要因からの負の波及による外国為替市場のボラティリティの高まりなどが考えられる。

このような背景の下、われわれは、パンデミック時に失われた政策余地を再構築し、財政の持続可能性を強化する一方で、的を絞った経済支援を行うことに引き続きコミットしている。

われわれは、世界貿易機関(WTO)を中核とする、開かれた、自由で、公正で、包摂的で、公平で、透明性があり、無差別のルールに基づく多国間貿易システムへの強いコミットメントを再確認し、地域包括的経済連携(RCEP)協定の実施を全面的に支持する。

日本、中国および韓国は、ASEAN+3金融プロセスにおけるASEAN諸国との協力及びコミュニケーションを更に強化することにより、ASEAN+3金融プロセスにおけるわれわれのリーダーシップを発揮し、域内の力強い回復と持続可能な成長に努める。

3. CMIMを含むASEAN+3 RFAの改革は、地域金融セーフティーネットを強化するための極めて重要な取り組みである。この観点から、われわれは、チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化(CMIM)およびそのモダリティの下での新たなファシリティーとして、適格な自由に使用可能な通貨(FUC)を選択通貨として組み入れた、迅速な資金供給ファシリティーRFF)の設立を支持する。

RFF:「Rapid Financing Facility」の略。自然災害など一時的外部衝撃による危機解消のため、事前・事後条件のない小規模・短期資金支援プログラム/引用者注

われわれは、CMIMの下でのこの新たなファシリティーの設立が、ASEAN+3の地域的な弾力性を大幅に強化すると確信している。

また、われわれは、(a)外貨準備、(b)ガバナンスおよび管理するために必要な能力に関する明確化の必要性を含む、コストと課題を認識しつつも、地域金融セーフティーネットの有効性を高める有償資本(Paid In Capital)構造の利点に合意した。

また、われわれは、新たな資金調達構造の可能性に関する調査に基づき、CMIMを、グローバル金融セーフティーネットをさらに補完する新たな有償資本構造を含むものへと移行させることを目的として、さまざまな資金調達構造の選択肢について、その目的とともに議論した。

4.われわれはまた、RFAの機能を改善するための政策調整手段のような新たなファシリティーの検討を含め、RFAロードマップを更に実施することに合意する。

5.われわれは、CMIMの新たなマージン構造の採用を歓迎する。これは、CMIMが必要な時に加盟国にとって効果的な資金調達オプションとしてのアクセシビリティーを向上させるものである。われわれは、CMIMの米ドル(USD)参照レートおよび現地通貨(LCY)証拠金構造の見直しに関する議論の進展を認める。

われわれは、CMIM協定の第2回定期見直しの進展に満足している。さらに、第14回テスト・ランが成功裏に完了したことを歓迎し、第15回テスト・ランに期待する。われわれは、LCYの口座開設に関する進捗を確認した。

6.AMROの戦略的方向性 2030(SD2030)の実施に向けた努力を評価する。

地域金融協力が拡大し続ける中、ASEAN+3金融プロセスの利益と発言力を促進するための体系的かつ専門的な支援を確保するため、事務面および政策面の両面において、より強力かつ献身的な支援を行うことが重要である。われわれは、CMIMとRFAの将来の方向性、特にRFFの設立、有償資本構造に関する検討の強化に対するAMROの知的・業務的支援を評価し、期待している。

2024年07月に新設される機能サーベイランス・リサーチ担当の着任と、AMRO経営陣の引継ぎスケジュールの見直しを期待している。さらに、われわれは、AMRO の継続的なサーベイランス能力および調査業務の強化に向けた努力、特に、2番目の重要なリポートである ASEAN+3 金融安定性報告書の発刊を高く評価することを再確認する。

7.われわれは、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の中期ロードマップ2023-2026の進捗を歓迎する。

われわれはまた、ABMIが、持続可能な金融エコシステムの発展のみならず、ローカルな市場を創出するための持続可能な債券の発行に貢献していることを認める。われわれは、ADBのこれまでの貢献に対する感謝の意を伝えるとともに、ABMIのイニシアティブの更なる発展を期待している。

8.われわれは、ASEAN+3災害リスクファイナンス(DRF)イニシアティブ事務局の設立を歓迎し、2年後に見直すとの合意を確認する。また、ASEAN+3災害リスク資金イニシアティブ事務局の事務局長として、河合祥弘氏を歓迎する。また、ASEAN+3災害リスク資金イニシアティブの行動計画の更新を歓迎する。

9.われわれは、作業部会(WGs)によるものも含め、ASEAN+3の資金協力の深化と拡大における実質的な進展を歓迎する。

われわれは、AMROの報告書「IMF Policy Coordination Instrument and implication for the ASEAN+3 RFA toolkit」が、今後ASEAN+3政策調整文書について議論し、発展させていく上で、メンバーにとって良い参考となることを認める。

われわれは、地域におけるフィンテックの普及を通じて金融包摂を強化するために開始された、「地域フィンテック規制フレームワーク」、およびオープン・バンキング・システムの活動と今後の詳細な作業計画を歓迎する。われわれは、WGの更なる進捗を奨励する。

10.われわれは、2024年のASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の共同議長である韓国とラオス人民民主共和国のリーダーシップに感謝する。

加えて、われわれは、来年の第28回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の議長国として中国とマレーシアを支持することに合意する。

11.われわれは、日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議が、引き続き政策対話・協調の強化のための効果的なプラットフォームとして機能することを確信し、2025年にイタリアのミラノで再度開催されることを決定した。

(吉田ハンチング@dcp)

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