韓国の国防部(日本の防衛省に当たる)が「’21-’25国防中期計画」を公表してから、韓国メディアでは「まだない」のに大変に喜んだ記事を公開しています。
特に「韓国版軽空母」(3万トン級とされています)について紹介していることが多く、韓国の皆さんの期待が大きいことが分かります。
しかし、(そもそも韓国の防衛に空母が必要かと議論はおくとしても)、いまだかつて外洋海軍を持ったことがなく、空母を運用したこもない国が(「軽」とはいえ)ゼロから空母を建造するというのは相当なムリ筋です。どこかからパクってくるのでもなければ設計段階で難航することが予想されます。
まず、韓国メディア『中央日報(日本語版)』の2020年08月17日の記事から軽空母に触れた部分を引用してみます。
艦艇建造費用だけで約1兆8,000億-2兆ウォンが投入される見込みの軽空母の受注戦では現代重工業が一歩リードしている。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
「韓国版軽空母に1兆8,000億-2兆ウォンもかけるんだ!」と嬉々とした書きぶりですが、(空母を造ったこともないのに)その金額でできると考えているのは驚きです。
というのは、韓国メディア『Insigt』の記事(2019年08月)では以下のように次期大型輸送艦「LPX-II」について書いていました。
新しいLPXは排水量が3万トン級以上になる。既存の独島艦と馬羅島艦(1万9,000トン級)の1.5倍以上の大きさだ。
LPXは2030年から本格的に戦力化される見通しである。建造費に3兆ウォン、F-35Bなど艦載機を購入するために2兆ウォンが入って5兆ウォンの予算が必要になると予想さる。
⇒参照・引用元:『Insigt』「韓国海軍、北朝鮮+日本が震える『ステルス戦闘機』搭載可能な5兆ウォンの『空母』造る」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
と、この時点では「3兆ウォン」の試算だったのですが、なぜかそれが「1兆8,000億-2兆ウォン」と「1兆ウォン」も下がりました(笑)。
しかし、これは「3兆ウォン」の方が現実的だと思われます。
というのは、アメリカ合衆国が保有する4.5万トン超(基準排水量:2万5,278トン)の強襲揚陸艦「アメリカ級」(全通甲板を持ち空母と似た見た目の艦種です)ですと30億ドル(約3,191億円)超の建造費がかかります(34-37億ドル)。
(乱暴な計算ですが)排水量の比で計算してみると3/4.5ですから建造費に「22億6,667万ドル」(約2兆6,715億ウォン)かかることになります。ですので、「3兆ウォン」というのはいい線なのでしょう。
初めて造る(軽)空母ということもあり、やはりこれぐらいは見ておかないと駄目なのではないでしょうか。
ですので、嬉々とされているところを誠に申し訳ないのですが、「1兆8,000億-2兆ウォン」の予算ではムリかと予想されます。「設計図は日本か合衆国からもらおう」などと虫のいい考えでないことを祈ります。
搭載する戦闘機も忘れてはいけない!
さらに空母ですから、搭載する戦闘機のことを忘れてはいけません。
実は「’21-’25国防中期計画」では、ここはぼやかされており、「搭載された垂直離着陸戦闘機の運用を通じて脅威を効果的に抑制することができる」とは書いてあるのですが、具体的な機種名等はありません。
しかし、軽空母で運用可能な「垂直離着陸可能」な戦闘機ですから「F-35B」が念頭にあることは間違いないでしょう。
ただし、
F-35Bは一機130億円以上
(外国が購入する際にはさらに価格は上昇する)
F-35Bは高価な戦闘機なのです。外国が購入する場合には150億円以上になるという推定もあります。
アメリカ合衆国が売ってくれたと仮定しても、
F-35Bが1機130億円で購入できたとしても、12機搭載、予備機も入れて16機は必要。
130億円 × 16 = 2,080億円1機150億円だとすると
150億円 × 16 = 2,400億円
かかります。つまり、空母に載っける飛行機代だけで空母の建造費(1兆8,000億-2兆ウォンなら)以上かかるのです。
「’21-’25国防中期計画」では特に「F-35B」の購入代金については触れていません。では、空軍の導入する予定の「F-35A」を機種変更するのか? 空軍の方はどうするのでしょうか?
ですので、「1兆8,000億ウォン-2兆ウォン」でゼロから空母を建造できると考えるのがそもそも無茶ですし、売ってくれるかどうかも分からない「F-35B」を購入する予算はどうするんだ、という計画なのです。
いや、もっと引いて見れば、そもそも5年で300兆ウォンも突っ込むお金をどこから捻出するんだ、という話です。
(吉田ハンチング@dcp)