2021年11月22日、韓国メディアに「韓国企業『Ram Technology(ラムテクノロジー)』が日本を超える超高純度のフッ化水素の製造に成功し、その生産技術の特許を10月中に取得完了した」という記事が出ました。
韓国メディア『フィナンシャルニュ-ス』の記事では以下のように書いています。
(前略)
今回、『ラムテクノロジー』が開発した超高純度フッ化水素生産技術は、従来方式とは異なり、一度に液体と気体形態の超高純度フッ化水素を同時に生産できることが特徴だ。また、従来の方式は、石英を持って蒸留法、電気分解法、吸着法、そして膜分離法などのさまざまな精製工程を通じて行わなければならなかったが、このような前処理過程は省略される。
(後略)
韓国メディア『ソウル経済』の記事タイトルは「日本を超えるフッ化水素生産技術が出た」でした。
『Korea Economics(コリア・エコノミクス)』は「韓国素材企業が高純度フッ化水素(15N)の特許取得発表 株価急騰 『技術で日本に先行する』」という記事を出しており、以下のように書いています。
(前略)
日本政府が2019年7月、半導体・ディスプレイの核心素材3品目について韓国への輸出管理を強化(輸出規制)すると発表してから2年余りで収めた成果となる。日本政府は超高純度フッ化水素とEUV用フォトレジスト、フッ化ポリイミドの輸出について管理を強化した。
一般的に超高純度フッ化水素は99.9999%(6N)以上の純度ガスを意味する。
『ラムテクノロジー』が生産技術を開発した超高純度フッ化水素は、1千兆分の1(ppq、part per quadrillion、10の15乗)以下のレベルまで生産される。
純度数字で表記すると99.9999999999999%(15N)となる。
『ラムテクノロジー』関係者は「現存する超高純度フッ化水素の中で最も純度が高い」とし「国内技術が日本に先行する」と説明している。
(後略)⇒参照・引用元:『Korea Economics』「韓国素材企業が高純度フッ化水素(15N)の特許取得発表 株価急騰 『技術で日本に先行する』」
この記事では15Nという信じられない純度のフッ化水素を製造できる技術であると書かれています。
ところが、11月23日、これがウソだと判明しました。
当の『ラムテクノロジー』自身が「プレスリリースを出したことはない」と否定したのです。
すると、このフッ化水素の高純度のスペックなどは一体どこから出た情報なのでしょうか。『コリアエコノミクス』の記事にある「国内技術が日本に先行する」と述べた関係者というのは誰なのでしょうか(存在するのでしょうか)。
↑2021年11月24日11:03現在、『ラムテクノロジー』のサイトでは特に情報は出ていません。
23日の韓国メディア『MTN』の記事によれば『ラムテクノロジー』は「『超純度フッ化水素技術開発』というタイトルで配布された報道資料は、当社とIPR代理店で作成しなかった」「現在の配布経緯を確認中」と述べているとのこと。
⇒参照・引用元:『MTN』「ラムテクノロジー『超高純度フッ化水素開発』偽のプレスリリースに株価急上昇」
また、同23日の韓国メディア『韓国経済』の記事によれば「『ラムテクノロジー』は『超高純度フッ化水素の精製方法および装置に対する国内特許を登録したのは事実』と伝えた」とのこと。
⇒参照・引用元:『韓国経済』「『ラムテクノロジー』は「超高純度フッ化水素特許は事実…資料配布は行っていない」」
『韓国経済』の記事が本当であれば(何が本当かここまでくるともう分かりませんけれども)、高純度のフッ化水素の製造および装置について韓国内特許を取得したのは事実(特許を取得したのは「フッ化水素生産のための精製方法および装置開発」に対する特許と判明:筆者追記)ながら、「15N」といった製造できるフッ化水素の純度については全く言及はしておらず、少なくともその部分についてはウソと判断せざるを得ません。
もし、その純度が本当であるなら、同社もプレスリリースを出してしかるべきです。
ちなみにMoney1でもご紹介したとおり、『Soulbrain(ソウルブレイン)』も「12N(99.9999999999%)のフッ化水素の製造に成功した」というプレスリリースは出していません。成功したといっているのは韓国の産業通商資源部だけです。
で、『ラムテクノロジー』の株価は2021年11月24日11:20現在、以下のようになっています(チャートは『Investing.com』より引用)。
報道が出た11月22日には急騰。翌23日にはさらに急騰しますが、「『ラムテクノロジー』は報道資料を出していない」報道で墜落。本日24日……「特許取得は本当らしい」で戻っている(?)という、まさに「なんだこりゃ」な値動きです。
とりあえず、実に韓国らしい騒動といえるでしょう。「2年余りで収めた成果」は幻だったようですね。一朝一夕でホイホイ結果が出るようなら誰も苦労しません。日本企業の技術力をなめないでいただきたいものです。
(吉田ハンチング@dcp)