2025年03月、中国で銀行・金融機関の法人数がどんどん減少しています。
2024年に銀行の統廃合が進んでいる――と報道も出ていましたが、減少数が顕著です。金融監督管理局の公式データによれば、以下のように減っているのです。
2019年末には「4,607」行あったのですが、2024年には「4,295」行ですから、6.8%も減少しました。銀行・金融機関が5年間で約7%も減るというのは尋常ではありません。
2022年 ⇒ 2023年:77減少
2023年 ⇒ 2024年:195減少
特に2024年には対前年比で195も減少しており、その減少数は2022年 ⇒ 2023年の約2.5倍に達しています。
これはもちろん、中国の国家金融監督管理総局が銀行の統廃合を進めているわけですが、なぜこのような動きを強めているのでしょうか。
国家金融監督管理総局の狙いは何か?
理由として、以下のような点が考えられます。
●地方銀行の経営悪化と不良債権の増加
地方の中小銀行(特に農村商業銀行や村鎮銀行)は、経営基盤が脆弱であり、不良債権が増加しています。
特に不動産市場の低迷や地方政府の財政難の影響で、貸付金の回収が難しくなっている。例えば、一部の小銀行では、貸出の40%が不良債権化しているとの報道もあり、これに対処するためという理由が考えられます。
●金融システムの安定化を図るため
経営不振の銀行が相次いで倒産すれば、預金者の混乱や取り付け騒ぎ(銀行から一斉に預金を引き出す事態:BANK RUN)が発生する可能性があります。
2022年には河南省の村鎮銀行で大規模な詐欺事件が発生し、預金者が大規模な抗議活動を行った例があります。政府はこのような金融リスクを未然に防ぐために、経営不安のある銀行を統合して規模を拡大し、安定させようとしている――と考えられます。
●金融業界の効率化と競争力向上を図るため
経営基盤が脆弱な銀行が乱立している状況を是正し、規模の大きな銀行を増やすことで、金融業界の効率を高める狙いがあるとも考えられます。これは資本の分散を防ぐ狙いもあるでしょう。
●政府の金融規制強化とリスク管理
中国政府は「金融リスクの管理」を最優先課題の一つに掲げており、特に地方銀行の乱立による信用リスク(端的にいえば借金を返せなくなるリスク)を抑えるために統廃合を進めています。
例えば、2023年の中央金融工作会議では「中小銀行のリスク解消」が3大課題の一つとして取り上げられています。今後も統廃合は加速し、さらに多くの地方銀行が消える可能性があるでしょう。
●デジタル金融の進展による影響
デジタル決済の普及により、地方銀行の存在意義が薄れているのは確かです。政府としては、競争力のない銀行を淘汰し、大手銀行の支店網やデジタル金融機能を強化することで、金融サービスの質を向上させたい考えがある、と見られます。
幾つか上掲で理由を挙げてはみましたが、当局が重要しているのは、「取り付け騒ぎを起こさせない」点ではないのかと考えられます。危なくなった銀行を、その事実を糊塗するために吸収合併させているのではないか?――という見方です。
あながち「外れてはいない」のではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)