先日、「中国の地方政府が約40兆元(約650兆円)の簿外債務を抱えている」と報じられました。この「簿外債務」とは何のことなのか皆さんはご存じでしょうか?
■簿外債務って一体ナニ?
簿外債務は「貸借対照表に記載されていない債務」のことです。
本来、企業が抱える負債は貸借対照表に記載する必要があります。しかし「偶発債務が計上されていないこと」や「意図的に債務を隠していること」で、簿外債務が発生します。
偶発債務というのは、未払いの賞与や退職金、また不動産や別会社の保証費用といった「今後支払うことになるかもしれないお金」です。偶発債務に備えて負債に計上(引当金)したり、貸借対照表に注記するなどして対処しないといけません。しかし「支払う必要はないもの」と判断して賃借対照表に記入せずに財務会計を行う企業もあります。中小企業では、こうした形で簿外債務が生まれることが多いといわれています。
将来的に債務が発生する可能性はあるものの、会計時点では実際の債務になっていませんから、この場合は一概に「悪いモノ」とはいえません。ただし「明らかになっていない負債」ですから、例えばM&A(Merger and Acquisitionの略:合併と買収)の際などには相手に不信感を抱かれたり、取引が破談になったりすることもあります。
問題は実際の債務であるにも関わらず、意図的に貸借対照表に記載しなかった場合です。
例えば、決算期になると含み損を抱えた資産を子会社などに譲渡して、決算が終わると買い戻すといった、いわゆる「飛ばし」を用いることで債務を隠すなどです。1997年に破綻した『山一證券』は、巨額の簿外債務を飛ばしで隠し続けて「粉飾決算」を行っていました。これは悪しき簿外債務の例です。
こうした悪しき簿外債務があることで最も影響を受けるのが株主です。貸借対照表を見て債務はないと判断して株を購入していたのに、「実は債務がこれだけありました……」となっては目も当てられません。その企業は信頼を失い、株価も著しく下がります。株主にとっては悲劇以外の何者でもありません。また、先に挙げた山一証券のように会社の破綻につながることもあり、そうなると株主だけでなく社員にも迷惑がかかりますよね。
そのため、企業に簿外債務がある場合は、その内容がなんなのかをしっかりと精査することが重要なのです。
(中田ボンベ@dcp)