「ミンスキー・モーメント」とはナニか

経済ニュースの解説記事などで「ミンスキー・モーメント」という単語が登場することがあります。実は、あまり聞きたくはない言葉なのですが、このミンスキー・モーメントとはどのような意味なのかご存じでしょうか?

■「バブルが崩壊に転じる局面」のこと

この「ミンスキー・モーメント(Minsky morment)」は、直訳すれば「ミンスキーの瞬間」という意味ですが、著名な経済学者であるハイマン・ミンスキー(Hyman Philip Minsky)にちなんで名付けられたテクニカル・ターム(専門用語)で、「形成されたバブルが崩壊(調整)に転じる瞬間(あるいは局面)」を指しています。

サブプライム・ローンが世界的な危機を招いたアメリカのバブル。このバブルのミンスキー・モーメントは2007年前後でしたし、不動産の異常な高騰が招いた日本のバブルのミンスキー・モーメントは1990年台初頭でした。

■資産価値の異常な高騰から下落(調整)局面に転じるプロセス

経済成長の局面では普通「債務」の増加を伴います。つまり、企業であて個人であれ、債務を背負って資産形成を行います。

例えば企業であれば、銀行など金融機関からお金を借りて設備投資を行って工場を建てますし、個人であれば、金融機関からお金を借りて住宅ローンを組むなどして家を購入しますね。

債務(借金)の代わりに工場や家など固定資産を手に入れるわけで、企業なら新設した工場で製品を生産して債務を返済、また個人なら所得で債務を返済していくわけです。これがきちんとバランスしているなら問題は起こりません。

しかし、時に過剰な固定資産の形成、資産価格の高騰が起こることがあります。日本でもアメリカでも不動産への過剰なお金の流入が起こり、不動産価値の異常な高騰となりました。このような事態がいわゆる「資産バブル」です。

この過剰な固定資産形成は、やがて資産価値の下落に向かう局面がやってきます。企業の工場の例えでいえば、稼働率が大幅に低下する、また投資に対するリターンの大幅な低下などが起こるのです。不動産への投資でいえば、買い手がいなくなる、入居率が下がる、賃借料が下がるといった事態です。

こういったことが起こると、時価で評価される資産額は減りますが、(投資した)債務自体は減りません。債務はお金で返さないといけないからです。すると、資産価値が目減りすると同時に、企業や個人が持っている時価の純資産(自己資本)が減少することになります。

ここで、資産価値が減り、自己資本が減少した企業・個人が資産の売却を始めると、(みんな同じことを考えますので)それが大量の「売り」につながり、資産価値はなだれを打って急落することになります。すると、債務超過に陥った企業、個人は債務の返済が不能になり、お金を貸した銀行などの金融機関に不良債権(回収のめどがない債権)が拡大します。

というわけでバブルが崩壊すると、

・信用収縮(クレジット・クランチ)
・債務者の破綻
・失業率の急騰

などが起こるのです。ハイマン・ミンスキーさんは、このような信用拡大、そのサイクル、金融の不安定性がどのようにもたらされるかを研究した経済学者でした。そのため、バブル崩壊の瞬間(局面)を指す言葉として「ミンスキー・モーメント」があるのです。

(柏ケミケル@dcp)

2件のフィードバック

  1. 2019年9月15日

    […] 込み、これで不動産開発を行ってきました。不動産価格の上昇があるうちはこれでいけるのですが、いったん下落に転じたらそこでおしまい。いわゆる「ミンスキー・モーメント」です。 […]

  2. 2019年9月17日

    […] る歴史的ルールが当てはまるのであれば、中国は間違いなく金融危機に陥ります。後から振り返ってみれば、ミンスキー・モーメントは2015年ごろだったと判断されるのかもしれません。 […]