これまでお伝えしているとおり、韓国の通貨「ウォン」の安値トレンドが続いています。
このウォン安傾向がこのまま続くことは韓国にとって大変にまずいのです。
2020年05月29日、ついに韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官が「為替レート」について発言を行った、と韓国メディアから報道が出ました。
とうとう看過できなくなったようです。以下に『毎日経済』の記事から引用します。
ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官は29日、「外国為替市場の投機的取引など、為替レートの一方向への偏りが過度に拡大していると判断した場合、政府が持つ幾つかの断固とした市場の安定対策を作動させ、対応していく」と明らかにした。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
長官の言葉は、事実上の「為替介入」宣言です。
為替レートは通貨量の比で決まる。ウォンを高くするには……
「為替レート」というのは基本的に2つの通貨の「通貨量の比」で決まります。
ドルとウォンなら、ドルの通貨量、ウォンの通貨量、この二つの比で決まるのです。
普通の物品を売り買いするのと同じで、レアなものになるほど高くなり、たくさん流通しているものほど安くなります。
現在、ウォンがドルに対して安くなっているのは、ドルの方が貴重(レア)だと考えられており、ウォンをドルに換える人が多いからです。そのため、ドルの量が減って、ウォンが増える状況です。で、「ウォンが安い」のです。
これを阻むためには、逆に「ドルをどんどんウォンに換えればいい」わけです。
大量のドルをウォンに換えて(ウォンを吸収して:ウォンを吸ってドルを吐く)、ドルの方がウォンよりたくさんある状態にすれば、ウォンの方が貴重(レア)になって価値が上がりますね。
ですので、韓国通貨当局が「ウォン安阻止」を目指すのであれば、「ドル売り・ウォン買い(まあ「両替」です)」を行わなければならなりません。
韓国に大量の「ドル」はあるのでしょうか?
とうわけで、ウォン安阻止を行うには「大量のドル」が要ります。
韓国政府(実際にオペレーションを行うのは『韓国銀行』)にそれほど余剰のドルがあるでしょうか? これは非常に面白くなってきたといえるでしょう。
まさに要注目!です。
ただし、今回の発言が「口先だけの介入」(いわゆる「口先介入」:発言だけで牽制し効果の発揮を狙います)なのか、それとも実際にオペレーションを行うのかはまだ分かりません(というかすでに行っているのでは……)。
この点にも要注目です。先からご紹介しているとおり、次月、06月にはドル流動性スワップ※1でFED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)から借りた「大量のドル」を返却しなければならないのです。
為替介入でドルを溶かしている場合でしょうか?
むしろ、為替介入のドルが枯渇したので、仕方なく今回「口先介入」を行ってみた、という邪推はいかがでしょうか。
※1韓国メディアは「通貨スワップ」、時に「通貨スワップ協定」と呼称しますが、紛らわしいのでMoney1ではFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)に従って「スワップライン」「ドル流動性スワップ」と記載します。
(吉田ハンチング@dcp)