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中国「債務スワップ」6兆元やるぞ! 地方政府の隠れ債務66兆元に効く?

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中国の地方政府の財政は危機的状況にあります。

Money1でもご紹介してきたとおり、公務員の人員削減、給与カットを行って支出を抑制し、その一方で税収が足りないので、資産の切り売り、罰金の強化などを行い収入の拡大を図っているのです。

これらの施策はその場しのぎであって、持続性がないのは明らかです。

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地方政府の財政を救うには債務を軽減するしかありません。なんとか一時的にもです。

「債務スワップをやるぞ!」という話

中国経済ウォッチャーからすれば「また出たよ」なのですが、『Bloomberg』に興味深い報道が出ました。

債務スワップを計画しているというのです。『Bloomberg(日本語版)』の記事から一部を以下に引用します。

中国は地方政府に対し、主に簿外債務の借り換えを目的として、2027年末までに最大6兆元(約125兆円)の債券発行を認めることを検討している。

(中略)

当局が議論の俎上(そじょう)に載せているのは、地方政府が資金調達事業体などを通じ借り入れたいわゆる「隠れ債務」を、より低い金利の新たな公債に置き換える案。

(中略)

こうした地方債の発行は、経済成長率目標(5%前後)の達成と金融リスクの緩和に向け藍仏安財政相が12日に概要を示した対策の一部になるという。

債務スワップは、中央政府の追加借り入れや消費喚起策を求める市場の期待に沿うものではないが、地方政府の職員給与や建設プロジェクトなどあらゆる支出に充てる資金の確保に寄与する。
(後略)

⇒参照・引用元:『Bloomberg(日本語版)』「中国、景気刺激策として地方政府に6兆元債務スワップ容認も-関係者」

債務スワップって何?

債務スワップというのは、至極簡単にいえば「借り換え」です。

より低利な地方債を「6兆元」分発行して債務返済に充てて、抱えている債務を低利な(地方債による)債務に換えてしまおうというのです。「債務A」を新規「債務B」にスワップ(取り替える)ので債務スワップです。

実はこの債務スワップは2015~2018年にも行われています。

中国政府は、2015年から地方債務のスワッププログラムを開始し、地方政府の膨張した債務リスクを管理するために、既存の不透明な債務をより低コストな公債へ置き換える施策を実施しました。

このプログラムでは、地方融資平台(LGFV:Local Government Financing Vehicleの略)を通じた借り入れが制限され、代わりに地方政府債が発行されるようになりました。

はい、出ました。融資平台です。

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上掲記事でもご紹介したとおり、融資平台は地方政府の打ち出の小槌として機能してきました。しかし、これを通じた資金調達が巨額に膨らみ「制御できん」と判断した中央政府は、2015年に債務スワップを開始したのです。

これは2018年まで継続しました

ただし2019年にも制限的には行われたことが確認されています

上掲の『Bloomberg』の記事にもあるとおり、現在時点で中央政府が画策しているという債務スワップも簿外債務(隠れ債務)をターゲットにしたものと見られます。

つまり――表に出ている地方政府の債務なんかよりも、隠れ債務の問題こそが――現在の地方政府の財政をより困難な状況に陥らせている根本原因であること――を示しています。

なぜ2018年に終了したかというと、隠れ債務があまりにも多く、地方政府の財政問題は根本的な解決には寄与しなかったため――と目されています。債務をスワップしても、利払いは低利になるかもしれませんが、債務の金額は基本変わらないはずなので、効果が薄くても当然です。

借り換えは繰り延べ手段にはなるものの、根本的な解決にはなりませんね。

6兆元なんか焼け石に水だ!

というわけで、この『Bloomberg』の報道が正しいのであれば、中国中央政府はかつて2015~2018年に行って根本的な解決には寄与せず、うやむやになった債務スワップをまたやろうというのです。

しかし、これが効くとは考えられません。

「2027年末までに最大6兆元」などという規模では、地方政府の隠れ債務の規模からすれば焼け石に水な金額だからです。

先にご紹介したことがありますが、地方政府の隠れ債務の源泉である地方融資平台がいったい幾らの債務を抱えているのか正確な数字が誰にも分かりません。

『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)などの国際機関が推計を行っていますが、これは機関によって時期によって数字が異なり、実態は不明。まさに群盲像を撫でる――な状況です。

恐らく、中央政府も正確な数字を把握していないものと思われます。

なぜなら中国共産党の官僚体質からいって、地方政府が中央政府に対して自分の都合の悪い数字を正直に報告しているとは考えられないからです。

それはともかく、『IMF』の「読み」に従うなら、2024年地方融資平台の抱える債務(隠れ債務)は「66兆元」です。2027年までに最大6兆元――という規模で効くでしょうか。隠れ債務が66兆元で済んでいるかどうかも分からんというのに。

(吉田ハンチング@dcp)

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