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中国「地方政府の債務上限を6兆引き上げる」債務スワップだから根本的な解決にはならない

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2024年11月08日、先にご紹介した「債務スワップ」が、第12回全国人民代表大会財政経済委員会で承認されました。

この債務スワップは、簡単にいえば「借り換え」です。

地方政府が抱えている債務の一部をより低利な債務に換えようという試みで、そのために地方の債務上限を6兆元引き上げるとしました。つまり、あと6兆ウォンは債務を増やすことを認める――というわけです。

以下が中国共産党当局が出したプレスリリースです。一応全文和訳しますが、面倒くさい方飛ばしていただいても大丈夫です。

全国人民代表大会財政経済委員会による

地方政府の債務限度額を増やし、既存の潜在債務を置き換える議案」に関する審査結果報告
(2024年11月4日、第14期全国人民代表大会常務委員会第12回会議にて)
全国人民代表大会財政経済委員会副主任委員 許宏才

全国人民代表大会常務委員会へ

全国人民代表大会財政経済委員会は、「地方政府の債務限度額を増やし、既存の潜在債務を置き換える(スワップする:引用者注)議案」について、財政経済委員会全体会議を開き、財政部からの説明を聞き、議案を初めて審査した。

審査結果を以下のように報告する。

党中央は地方政府の潜在債務リスクの防止・解決に非常に重きを置いており、債務の新規増加を抑制し、2028年末までに既存債務をすべて解決するよう求めている。

国務院の議案によれば、2018年以降、各地域と各部門は党中央の方針を実行し、政策や資金を統合して潜在債務の解消に努め、全体的にリスクは緩和されてきた。

2023年末時点で全国の潜在債務残高は14.3兆元となっている。

今年に入り、外部環境の変化や内需不足により、財政の収支のバランスが難しく、税収の増加が予想を下回り、土地収入も大幅に減少し、各地の債務解消に必要な資金の不足が顕著である。

このため、国務院は6兆元の地方政府債務限度額を増やし、既存の潜在債務を置き換える議案を提出し、各地の債務解消を支援することにした。

この追加債務は全額を特別債務の限度額として設定し、一括で承認し、3年に分けて実施する。

これにより、2024年末の地方政府の特別債務限度額は29兆5,185.08億元から35兆5,185.08億元に引き上げられることになる。

財政経済委員会は、国務院が提出した6兆元の地方政府債務限度額の増加は、党中央の方針を実行する重要な措置であり、地方財政の安定、地方政府債務リスクの防止、高品質な発展の推進に意義があると認識している。

2024年の地方政府特別債務限度の調整案は法律に準拠しており、今回の全国人民代表大会常務委員会での議案の承認を提案する。

今後の推進方針:
1.置換債券政策の精密な実施
各地の潜在債務の規模やリスクに応じ、地方政府の債務限度を合理的に配分し、債務スワップを早急に実施して地方の財政負担と利息負担を軽減する。

2.地方の主体責任の徹底
置換債券政策により法定債務が増加するため、地方政府は債務返済の責任を果たし、特に高リスク地域は予算資金や資産活用などで債務を圧縮する必要がある。

3.新規潜在債務の抑制
政府支出の厳格な管理を強化し、金融機関の融資業務を規制することで、潜在債務の新規発生を防止する。

4.融資平台企業の改革推進
地方政府と国有企業の関係を整理し、国有企業が市場原理に基づき、公益性プロジェクトを自己責任で遂行する。

5.高品質な発展に適合する政府債務管理機構の整備
経済成長と財政の持続可能性を考慮し、債務規模の合理的な設定と構造の最適化を図り、高品質な発展と安全保障の両立を実現するため、逆周期調整としての政府債務の役割を強化する。

⇒参照・引用元:『中華人民共和国人民政府』公式サイト「全国人民代表大会财政经济委员会关于《国务院关于提请审议增加地方政府债务限额置换存量隐性债务的议案》的审查结果报告」

自分で「外部環境の変化や内需不足により、財政の収支のバランスが難しく、税収の増加が予想を下回り、土地収入も大幅に減少し、各地の債務解消に必要な資金の不足が顕著」と書いています。

地方政府の財政が立ち行かないことを自分で認めています。

債務スワップでもやらきゃ仕方がない――というわけですが、6兆元債務上限を増やしたところで地方財政に効くかどうか――です。恐らく効きません。なぜなら、その増やした債務も「低利での借り換え」に使われるだけだからです。

隠れ債務だったものを地方政府の低利の負債にしましょう――というだけで、根本的な解決にはならないからです。

本来、中央政府がしなければならないのは地方政府を対象にした不良債権処理です。

企業相手であるなら、バランスシートをつまびらかにして、資産、負債を明確に分類し、債務を返済可能なもの、不可能なものに仕分けし、金融機関・債権者を相手に再生・破綻処理を行わなければなりません。

しかし、対象が地方政府であるので「破綻処理」は論外です。そんなことをすれば中国全土が破綻した地域ばかりとなり、(今だってないようなものですが)公的サービスは止まり、社会秩序はなくなるでしょう。

(もはやその寸前といってもいいですが)信用不安・社会不安が中国に満ちて自壊することになります。

ですから、このような場当たりな処理をすることになります。恐らく場当たりな処理はこれからも継続するでしょう。

無茶苦茶なのは「2028年末までに既存債務をすべて解決するよう求めている」という文です。本気で「できる」と思っているのでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)

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