「ためにする議論」なんじゃないのか、あるいは「韓国をもっと評価してくれ」というだけなんじゃないのか――という節がありますが、韓国メディア『アジアトゥデイ』が面白い社説を出しています。
記事から一部を以下に引用します。
ドナルド・トランプ大統領が「対北朝鮮特別代表」の任命を検討している状況で、合衆国の対アジア外交戦略は「中国共産党の対韓影響力の弱体化」になるだろうという見通しだ。
アメリカ合衆国のシンクタンク『アメリカ第一政策研究所』(America First Policy Institute, AFPI)を訪問中のチェ・ウォンモク梨花女子大学法学専門大学院教授によると、「トランプ政権の対北朝鮮政策の8つの必須考慮要素」は、中国共産党の影響力弱化に焦点が当てられている。
合衆国は朝鮮半島戦略の最大の障害として、
「中国は太平洋を合衆国と二分して新型大国関係を形成することを長期的な目標としており、アラスカからハワイまでの境界線の西側で中国の支配力を形成することが究極の目的」
――と評価している。
このような状況で、合衆国は――、
中国がこのような構想を完成させるための太平洋進出の橋頭堡として朝鮮半島が必要であり、韓国で親中政権を維持させることが重要だ
――と分析した。
合衆国が中国を圧迫することに対する反作用として――、
中国が周辺国に対する政治工作を通じて合衆国の圧力に集団的に対抗できる勢力を形成しようとする点
――も合衆国の危険要因として挙げられた。
このような中国の構想の下、韓国で不正選挙が定期的に発生しており、これは尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が戒厳令を宣言してまで不正選挙の現状を調査させた主な原因となっている点も合衆国のリスク要因だ。
また合衆国は――、
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の弾劾が可決されれば、不正選挙の主張は韓国内でこれ以上提起されにくくなり、親中性向の人物がすべての公職に選出されるのを防ぐことができない
――という結果を招くことを大きく懸念した。
これは、朝鮮半島が中国の新型大国関係樹立のための橋頭堡として機能することを意味し、合衆国は太平洋を最終的に中国と二分する状況まで許容しなければならないかもしれないという点も、トランプ政権は明確に認識しているとされる。
(中略)
トランプ政権は、切迫した韓国情勢と不正選挙問題に対し、早急な措置を通じてその責任を果たさなければならないという意見もワシントン内で提起されている。
(後略)
まず指摘しておかないといけないのは、『アジアトゥデイ』が保守寄りのメディアであり、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を擁護し、弾劾成立を阻もうという意図がある――という点です。
例えば極左メディアの『ハンギョレ』は、さっさと尹大統領を罷免したいので、裁判で次々を明らかになった「証言のウソ」を覆い隠して「確定した事実」のように書いていますが、これは政治的な動機からです。
左派系・進歩系のメディアはうそばっかりつきますが、保守寄りのメディアも「政治的な立場が逆なだけ」で、本当に信用できるのか――は注意しなければなりません。
「韓国では政治的でないものなど、何もない」からです。
中国が「アラスカからハワイまでの境界線の西側」で支配力を形成することを戦略目標にしている――まではいいでしょう。
習近平総書記は、自身で合衆国に対して「太平洋を二分して支配しよう」と図々しい要求をしたことがあるからです。「やっぱりこの構想はやめます」と言った――という話は出ていませんので。
そこから敷衍して、「太平洋進出の橋頭堡として朝鮮半島が必要」も……まあいいかもしれません。
「本当に必要と思っているか」には疑問符が付くでしょうが。
実際には田中明先生が指摘されたとおり、中国は朝鮮半島を「支配」はしても「統治はしないよ」、というのが歴史的な態度です。朝鮮人がいかに面倒くさい人々かを歴史的経験で知っているからです。
日本人は知恵が足りなかったわけですが、それはともかく、さらに敷衍して「中国が周辺国に対する政治工作を通じて合衆国の圧力に集団的に対抗できる勢力を形成しようとする」というのは、どうでしょうか。
「合衆国の圧力に集団的に対抗できる勢力」はすでに形成されています。ただし、北朝鮮の浸透工作によって作られたもので、親北・反米・反日で、「親中国」かは……怪しいところです。
なぜなら中国と北朝鮮の関係は、現在は「むしろ悪い」というのが本当のところで、これも歴史的な経緯が示していますが、北朝鮮と中国はすぐに仲違いし、すぐに親密になります。
日本人からすると「何やってんだろう」なのですが、中国と北朝鮮は「裏切り・裏切られる」のが常です。
この先が問題で――さらに敷衍して「尹大統領が弾劾罷免されたら、親中性向の人物がすべての公職に選出されるのを防ぐことができない」と主張するのはいかがなものでしょうか。
可能性はあるかもしれませんが、韓国内に作られた北朝鮮シンパな人々(代表的なのが『民主労組』)が「親中国」方向で選挙活動を行うのでしょうか。
いや根源的な問題として、この記事で述べていることは「本当にトランプ政権が考えていること」なのでしょうか。
「トランプ政権は、切迫した韓国情勢と不正選挙問題に対し、早急な措置を通じてその責任を果たさなければならない」という意見は、本当にワシントン内で提起されているのでしょうか?
かつてあった「文在寅ファンクラブが形成されている」みたいな記事と同種のウソなのではないのでしょうか?
(吉田ハンチング@dcp)