韓国の半導体輸出を支える『サムスン電子』と『SKハイニックス』が、次の成長動力として「車載用半導体」を育成しようとしているという報道が出ています。
車載用半導体は利幅が大きくなく、また技術・ノウハウの蓄積が必要で参入しにくい分野だといわれています。それに今から挑もうというのですから大変です。
車載用半導体市場は、市場調査会社『IHSマーケット』によると、
で、年平均9%ずつ成長して、
に到達すると予測されています。この予測の基になっているのは、内燃機関自動車から電気自動車、さらに自律走行自動車へと移行するにつれて、必要になる半導体の量が増加すると見られることです。
電気自動車:約1,000個
自律走行自動車:約2,000個
確かに車載用半導体の需要は高まると見られますが、今からこのジャンルにいって自動車メーカーからの発注を取るのは並大抵のことではありません。
というのは、自動車で使用されるため、過酷な環境に耐え、信頼性を損なわない堅牢性、さらには安全性が担保されたものであることが要求されるので、車載用半導体はレギュレーションが非常に高いのです。
レギュレーションについては諸説あるのですが、韓国メディア『BUSINESS watch』に登場したスペックを引用すると以下のようになります。
稼働温度条件:-40~155度
在庫保有:30年以上
このようなレギュレーションに耐える半導体を作るにはやはり高い技術・長年のノウハウが必要です。
その上、車載用の半導体は収益性の高い製品ではない、とされています。
世界最大の半導体製造会社『TSMC』(Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの略:台湾積体電路製造)の、2020年第4四半期の売上高のうち、車載用半導体はわずか3%に過ぎません。
技術・ノウハウの不足、収益性の低さ、どれが原因なのかは不明ながら、韓国の『サムスン電子』『SKハイニックス』は車載用半導体製造を避けてきました。
ですので、2020年のように「車載用半導体がない!」みたいな事態になると、「半導体強国」を自称しているくせに『現代自動車』など韓国内の自動車工場のラインが止まったりするのです。
なにせ韓国は車載用半導体の98%を輸入に頼っています(同じく韓国メディア『BUSINESS watch』より引用)。
2020年の車載用半導体が不足した際には、文在寅政権からも「『サムスン電子』『SKハイニックス』がこれから注力する」などという話が出ていしましたが、車載用半導体というのはそんな急場でホイホイできるものではないのです。
車載用半導体は、オランダの『NXP』、ドイツ『Infineon Technologies(インフィニオン)』、日本の『ルネサス』が主要な供給社ですが、ここに割って入ろうというのは非常に野心的な願望であるといえます。
お手並み拝見、です。
(吉田ハンチング@dcp)