まず、各種韓国メディアで取り上げられている2021年05月27日の文在寅大統領の発言をご覧ください。
「最近の危機対応の過程で国家債務が急速に増加することは事実だが、他の国に比べて増加幅が低く、財政の健全性は良好な方」
「昨年用意した財政準則が2025年から計画通りに適用されるよう準備して周知をお願いする」
あと1年自分が大統領の期間には拡張路線、お金じゃぶじゃぶでいくと宣言しています。先にご紹介したとおり、景気回復の足固め、また雇用回復のためにさらなる資金投入も辞さない覚悟――と表明しておりますので、本当に実行するでしょう。
その一方で、2020年11月に出した財政準則を守ることを先の政権に押しつけました。この財政準則はすったもんだの揚げ句に企画財政部から出たもので、要は財政赤字はここまでにしましょう、と縛るルールです。
政府の野放図な債務拡大に歯止めをかけるために作られました。Money1では以下でご紹介しましたので、詳細は以下の記事をお読みいただければ幸いです。
次期政権は文大統領のレガシーに縛られる!
要するに、自分の政権ではお金じゃぶじゃぶでいくけど次期政権ではきちんと財政を健全にしてね!という非常に投げやりなことをおっしゃているわけです。確かにしばらく金融緩和を続けないといけない状況であることは確かですが、ここまでしれっと発言できるのは大したものです。
これらの発言を受けて、さっそく韓国メディアでは政府負債の拡大について紹介しています。
上掲が、現在のところ予測されている2024年までの「政府負債」「政府負債の対GDP比率」推移です。グラフにはありませんが、韓国の国会予算政策処は2025年には政府負債対GDP比率は「61.7%」と予測を出しています。
しかし、上掲のとおり、文大統領はお金を使う気満々で、国会予算政策処の予測は2020年の第3次補正予算までの段階での数字です。それから第4次補正予算、2021年第1次補正予算をすでに実行してしまいましたので、政府負債対GDP比率は予測より確実に悪化します。
また、文大統領肝いりの「韓国版ニューディール」なる政策で2025年までに約160兆ウォン(約15.7兆円)を投入する予定なのです。
国債なんかいくらでも刷ってお金に換えていけばいいんだよという話もあるのですが、韓国の場合には国債の約17%を外国が引き受けています。また、2020年には先にご紹介したとおり韓国政府は対外債務を61億ドル(約6,634億円)も増やしています。この調子でいくと……という懸念もあるのです。
韓国政府の負債および対外債務の増加にもご注目ください。次期政権は文大統領のレガシーに縛られることになるのです。
(吉田ハンチング@dcp)