宗教団体『法輪功』系で歌舞いている中国語メディア『看中国』がちょっと面白い記事を出しています。
中国経済は今や「5低」の時代を迎えており、末期的だというのです。5低はすなわち――
低增长(低成長)
低收益(低収益・リターン)
低欲望(低意欲)
低通胀(低インフレ)
低利率(低金利)
――のことです。『看中国』は同記事の冒頭で以下のように書いています。
中国経済と社会はすでに大きな変化を遂げ、居住者層の生活も含めて、新たな時代に入っている。具体的には、「5つの低」、すなわち低成長、低所得、低意欲、低インフレ、低金利です。
もっと口語的に言えば、誰もが直感的に感じているように、経済活力が低下し、お金を稼ぐことがますます難しくなり、社会活動が低迷し、投資する意欲がなくなり、さらに「横になりたい」とさえ思っている。
この現象は、1990年代のバブル崩壊後の日本の社会経済状況における「新常態(New Normal:ニューノーマル)」と非常に似ている。
(後略)⇒参照・引用元:『看中国』「中国经济社会的“五低时代”来临(图)」
バブル崩壊後の日本のニューノーマルと似ているは余計ですし、「そうかしら?」と思わされますが、中国は「5低」だ――という指摘は正しいでしょう。
風が吹けば桶屋が儲かる――みたいな話なのですが、ドミノ倒しのように5低になる経緯を以下のように説明しています。まず「経済の低成長」です。
1.経済の低成長
中国の経済成長率は2007年にピークを迎え、そのときにはGDP成長率は14%を超えていた。この年は、A株市場が史上最高値を更新し、不動産市場も非常に活況を呈するなど、経済が最も繁栄した年であった。
2007年以降、経済成長率は下降傾向に転じ、2011年には1ケタ台で10%を下回るようになった。
2020年のコロナ禍発生前、経済成長率はすでに6%強にまで落ち込んでいた。2023年には5.2%になり、2024年には目標成長率である5%にまで落ち込む。
さらに3~5年後には、4%前後になると推定される。10年後、15年後には、3%前後になる可能性もある。
中国共産党政府の公表が正しくても、このような経済の低成長に陥っています。
「1」の経済成長率の低下は「2.投資リターンの低下」を導きます。これは当然の帰結です。
2.投資リターンの低下
経済が活発でない場合、企業は利益を上げることが難しくなります。家計の賃金上昇率も鈍化し、住宅購入や金融商品、株式投資など家計部門の投資リターンも低下します。リターンが一定の水準まで低下すると、企業経営者、企業経営者、個人投資家など、誰もが利益を上げるのが難しくなります。過去2、3年のように、大幅な損失を被る時期さえあるかもしれません。
大幅な損失が過去2、3年で済みますかね?なのですが、それはともかく、誰もがかつてより稼ぎの金額が減少します。すると――(ここが中国っぽいのですが)みんなの「やる気がなくなる」――としています。「3.低意欲」になるというのです。
3.社会的な意欲の低下
企業部門は利益を上げられないため、投資を減らすしかありません。損失を出すリスクを負うくらいなら、むしろ仕事を減らしたいと考えてるのです。
ここ数カ月、この傾向はM1の変化に顕著に表れています。
M1は狭義流動性を表す指標で、主に企業や機関の預金がどれだけ活動しているかを反映しています。07月のM1は前年同月比で6.6%減となり、前月の5%減からさらに悪化しました。
4カ月連続で対前月比でM1が減少するのは史上初のことで、非常に不吉な状況です。
M1の大幅な変動は、企業が預金を理財商品などに移すといった撤退行動の影響もありますが、主な原因は企業部門が拡大再生産をする意欲が非常に低いことにあります。
事業を行っている人々の中には、「横たわる」ことを選び、閉鎖する人も依然として多いのです。近年、多くの都市の街角で、貸店舗が増えています。
家計部門も同様で、投資はせず、貯蓄のみで意欲はない。このような状態なので、当然ながら誰もが低意欲の状態に陥る。
補足すると、中国のM1は以下のように低迷を続けています。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。
2024年01月には「69.42兆元」あったのですが、これが直近の08月には「63.02兆元」まで減少しています。
通常、M1が縮小することには以下のような意味があります。
企業や消費者が手元の資金を運用せず、経済活動全体が停滞している
企業や投資家がリスクリスクを避け、安全資産に資金を移すことで、金融市場全体の活性度が低下している
etc.
特に中国の場合には、M1の減少は国内の経済成長が停滞していることにあり、企業部門の活動が鈍化し、投資や生産活動に対する信頼が失われつつあること――を示していると考えられます。
「みんなにやる気がない」ので、当然消費活動が減退しますので「4.低インフレ」となります。
中国当局の皆さんが恐れている「デフレって言うなー!」なのですが。
4.低インフレ
低意欲は第4の現象、すなわち低インフレにつながります。社会全体が低意欲の状態に陥ると、特に庶民がお金を使うことを恐れ、高い値段を払うことを嫌がるようになると、消費は自然と減り、物価は当然上昇しない。
実際、この1年、中国はデフレを経験しています。『中国人民銀行』の元総裁である易綱氏は、これを公に認めています。
08月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.6%上昇し、ここ数カ月よりも上昇率が高く、勢いが増しているように見えます。
しかし、工業製品価格指数(PPI)は前年同月比で1.8%下落し、前2カ月と比較すると1ポイント下落した。PPIは23カ月連続で前年同月比で下落しています。
現在、CPIとPPIは乖離しており、近い将来にデフレを克服できるかどうかは依然として楽観視できません。
で、最後の「低」、「5.低金利」につながります。
5.低金利
低インフレは、5つ目の現象である低金利をもたらします。
インフレ率が高い場合、金利は引き上げられる必要があります。逆にインフレ率が下がり物価が低い場合、金利を低く抑えるために金利を引き下げる必要があります。
そのため中国では、2017年から金利が低下し続けています。金利引き下げを何度か行った後、2024年07月には貸出金利が再び引き下げられました。
2024年06月には四大銀行の5年定期預金金利は2.5%でしたが、現在は1.8%に過ぎず、史上初めて2%を切りました。
というわけで、中国では5つの「低」が完成するわけです。
(吉田ハンチング@dcp)