中国では(よせばいいのに)電気自動車が幅を利かすようになっており、国産電気自動車メーカーが販売台数を大きく伸ばしています。
その一方で、外国自動車メーカーのクルマが売れなくなっています。
国産自動車で外国企業のクルマを締め出す――という中国共産党の思惑は当たっています。しかし、これがまた中国と外国との対立を高めることになるのです。
2024年10月23日、世界初のBMW 5S店※として注目された『北京星徳宝自動車販売サービス有限公司』は、突如閉店・営業終了となりました。
↑突如閉店となった『BMW』ディーラー。
5S店は、中国の高級車ブランドなどが特に採用する形式で、顧客体験の向上を目的とした総合的なサービスを提供します。つまり、この『北京星徳宝自動車販売サービス有限公司』は特別なお店だったのです。
ちなみに、通常の「4S」店に追加される「もう一つのS」は、同店舗の場合はSustainability(持続可能性・環境対応)です(他のSもアリ)。
同店は2012年06月にオープンした歴史ある店舗で、敷地面積は22,000平方メートル、総投資額は3億2,000万元以上です。
閉鎖されたお店には、以下のような貼り紙がされました。
親愛なるお客様へ
北京星徳宝は、経済環境全体の影響を受け、現在深刻な資金圧力に直面しております。
お客様と従業員の利益を保護するため、当グループは資金注入または他グループによる管理の解決策を積極的に模索しています。
BMWブランドの認可は2024年10月20日に終了しており、現在、新車販売およびアフターサービスは停止しております。
迅速に資金注入または管理移行を実現するために、当社は関連手続きに基づき、会社データおよび顧客の権利を整理しております。
北京星徳宝自動車販売サービス有限公司
2024年10月23日
日本でたとえるなら、突然『ヤナセ』がお店を締めた――みたいな感じでしょうか。
ひどいのは「アフターサービスが全面停止」という点で、5S店を信じてクルマを買ったオーナーはどうすればいいのでしょうか。
多くのBMW車のオーナーは、プリペイド特典の返還が滞納されています。
これには現金チャージやクーポン・バウチャーが含まれ、通常はアフターサービスやメンテナンスに使用されるものですが、これは返金されない見込みです。
オーナーはすでに逃亡しており、従業員への給与未払いが2・3カ月分あるとのこと。この未払い給与も支払われないでしょう。
一部の顧客は集団的な抗議を計画中という話もありますが、オーナーが逃亡しているので、恐らく泣き寝入りになるのではないでしょうか。
ベンツ・BMW・アウディの中国では「BBA」と呼ばれるドイツ高級車ブランドは、EVにシフトしたものの、中国電気自動車市場のレッドオーシャン、すなわち安値の叩き合いに巻き込まれ、内燃機関車は売れなくなり、踏んだり蹴ったりな状況になっています。
世界初の5S店といわれたお店の突如閉店は、これを象徴する出来事といえるのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)