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アメリカ農業はTPPに期待していた件

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オバマ政権時代に閣僚レベルで合意していたものを、トランプ大統領がひっくり返したため11カ国で発効した「TPP11」。TPP(Trans-Pacific Partnershipの略:環太平洋戦略的経済連携協定)についてアメリカ国内ではどのような反応だったのかは、日本人にとっては今ひとつピンときませんね。

2017年01月、トランプ大統領は「TPPから永久に離脱する」大統領令に署名しましたが、実はアメリカの農業界はこの判断に心底がっかりしたのです。

アメリカ最大の農業団体「AFBF(American Farm Bureau Federationの略:ファーム・ビューロー)」は12カ国でTPPが発効すれば、「農家の所得を44億ドル押し上げる」と計算していました。

・アメリカの農産物の純輸出額:53億1,200万ドル増加
・アメリカの農家の現金収入:84億5,930億ドル増加
(純所得の増加が44億ドル)

ですから、アメリカ農業界ではTPPへの期待は大きなものでした。また、現金収入が最も増加するのは牛肉(11億3,670万ドル)、豚肉(10億9,190万ドル)と目され、この2つの品目の最大輸出先は他ならぬ日本です。日本への輸出増がアメリカ農業の売上・利益を拡大する(中期的には経済成長の大きなベトナムへの輸出が拡大する)ものと考えられました。

しかし、トランプ大統領によってその期待も木っ端微塵に打ち砕かれました。トランプ大統領の溜飲は下がったかもしれませんが、アメリカ農業界の受けた打撃は大きなものです。

TPP11に参加した国々の中には、日本に畜産物を輸出するカナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドが入っています。TPP11の発効によって、これらの国からの輸入品の関税は下げられます。対してアメリカに対する関税は据え置きです。

ちなみに日本の輸入牛肉・豚肉の国別シェア(金額ベース)は以下のようになっています。

●輸入牛肉の国別シェア(2016年)
第1位 オーストラリア:54.4%
第2位 アメリカ:38.0%
第3位 ニュージーランド:3.9%
第4位 カナダ:1.9%
第5位 メキシコ:1.4%

●輸入豚肉の国別シェア(2016年)
第1位 アメリカ:30.6%
第2位 カナダ:20.8%
第3位 デンマーク:13.7%
第4位 スペイン:10.3%
第5位 メキシコ:8.8%

⇒データ出典:『農林水産省』「品目別貿易実績」
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_boeki_tokei/sina_betu.html

アメリカは牛肉では2位、豚肉では1位ですが、アメリカの関税(現在は38.5%)だけが据え置かれた場合、他の国々が価格の優位性を生かして対日輸出を大きく伸ばす可能性があります。

実際、日本とオーストラリアの二国間FTAによって、オーストラリア産牛肉にかかる関税は「38.5%」から徐々に引き下げられています。TPP11によって、この関税引き下げペースは早まり、オーストラリアニュージーランドカナダメキシコの関税は最終的に「9%」になります。

アメリカ産牛肉・豚肉への関税が38.5%のままであれば、日本への輸出量が減ることは不可避です。そのため、アメリカの農業界では「日本とのFTAを進める」ようにトランプ政権に働きかけています。

問題は時間です。FTAの交渉が行われる間にも他国の関税は下がり、アメリカのシェアを奪っていくでしょう。ほかの分野はともかく、アメリカ農業にとってTTP離脱は大きな失点となりました。

(柏ケミカル@dcp)

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