韓国の「通貨安定証券」の件です。通貨安定証券は、市中のお金の量をコントロールするために中央銀行『韓国銀行』が発行する債券です。
そもそも中央銀行が発行する債券というのも世界的に見てまれな存在ですが、『韓国銀行』はこの債券を発行し過ぎて利子払いに苦しみ、あろうことか赤字に転落したことがあります。
「お札を刷れる中央銀行がなぜ赤字になるんだ」と世界的な珍事でした。
通貨安定証券はそのようないわくつきの債券なのです。今も『韓国銀行』はこの通貨安定証券を発行し続けています。
特に、インフレ懸念が高まっている韓国ではお金じゃぶじゃぶ状態をなんとかしないといけません。市中からお金を回収するための通貨安定証券の出番、というわけです。
通貨安定証券の発行金額を減らした
2021年10月27日、金融委員会によると、『韓国銀行』は11月に発行する通貨安定証券の金額を縮小しました。
もともとは「9兆ウォン」発行する予定だったのですが、「6兆6,000億ウォン」(約6,402億円)にしました。「2兆4,000億ウォン」(約8,730億円)も減額したのです。
韓国政府が家計負債を懸念して融資を絞る規制をかけており、つまりはこれはお金じゃぶじゃぶ状態を回収しようとする動きです。
『韓国銀行』が協力しなくてどうするのでしょう。なぜ、『韓国銀行』はビビったのでしょうか(「ビビってなんかいませんよ」)。
理由は「金利」にあるものと見られます。
先にご紹介したとおり、韓国債の金利が上昇しています。これから債券を発行すると、高い金利でないと債券市場の需要を満たすことができません(金利を上げないと買ってくれない)。
通常の「売りオペ」※なら国債を売るので、買い手に金利を支払うのは「国」です。
しかし、通貨安定証券の場合は、利払いを背負い込むのは『韓国銀行』自身です。高い金利で大量に通貨安定証券を発行すると、利払いに苦しむことにあります。
また、韓国の債券市場はそれほど大きなものではないので、『韓国銀行』が9兆の債券を発行すると需給バランスを崩すという判断もあったものと思われます。
自身で基準金利を上げたせいなので自縄自縛、「やっておって今さら……」という話なのですが、通貨安定証券もまた金利問題でドタバタしているというわけです。
※「売りオペ」というのは、市中のお金の流通量が多いと判断されるときに中央銀行が行うオペレーション。国債などを売ってその分のお金を吸収し、市中のお金の量を減らします。
<<重要な追記>
「売りオペ」の説明が誤っていおりましたので修正いたしました。誠に申し訳ありませんでした。
(吉田ハンチング@dcp)