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韓銀総裁「あの時は為替介入しかなかった」ドルが溶けても仕方ない

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『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、現在アメリカ合衆国・ワシントンに出張中です。

2023年04月14日、李総裁は古巣である『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)の「中央銀行のインフレ対応」という高官級パネルディスカッションに出席。

ここで、2022年に起こった急激なウォン安時期について話しました。これが非常に興味深い内容ですのでご紹介します。まず以下の発言。

「昨年9~10月、合衆国の積極的な金利引き上げでウォンが予想よりはるかに早く下落したため、通貨介入効果に頼るしかなかった

李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、ウォンが予想よりはるかに急速に下落したので、為替介入を行うより他なかったと述べました。以下のチャートをご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用:月足)。

上掲はローソク足1本が1カ月のプライスアクションを示す「月足」チャートですが、09月は「始値:1,341.76ウォン」⇒「終値:1,439.96ウォン」という無茶苦茶な陽線で、ウォンはなんと1カ月で7.3%も安くなりました。

暴落と呼んでいいですし、墜落です。

また10月は上掲のチャードどおり、これ以上抜かれてたまるかという天井圏での戦いがあった1カ月で、下ヒゲが長いことからも分かるとおり、「下げませんよ」という市場の意思表示がされていながらもなんとか陰線に抑え込んでいます。

さすがにこの時は、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も「為替介入を行って凌ぐ」しかなかったわけです。

で、どのくらいドルが溶けたかというと以下です。


↑ドルウォンチャート(日足)に『韓国銀行』発表の外為純買収金額(四半期ごと発表)を重ねたもの

残念なことに、『韓国銀行』の発表は四半期ごとで、月別のデータがないのですが、09月が属する第3四半期には「175.43億ドル」、10月が属する「46.04億ドル」を溶かしています。

ウォン安阻止のための為替介入による「ドル売りウォン買い」がいかに激しかったかを示しています。

次に、当時の思惑について李総裁は以下のように語っています。

「当時、私たちの目標は基本的にFX証拠金取引為替差益取引を防止し、為替不安の悪循環を防ぐことだった」

「FXデリバティブの満期は3~6カ月なので、為替レートが特定のしきい値や予想より早く切り下げられると、投資家は数カ月で莫大な損失を被る可能性があるが、韓国の事例は短期的な緩和装置としての為替介入を上げた良い例だった」

ウォンが安くなり、これはもっと安くなるぞと考えれば、当然投資家はウォンをショート(売り)します。この動きが大きくなると、ウォンはさらに安値に動くことになります。安値に動けば、さらにショートが……と悪循環になってしまいます。

アジア通貨危機時に起こったショートの奔流と同じです。ですので、悪循環を食い止めることを第一義に考えていたと李総裁は(恐らく本音を)吐露しています。で、11月以降はウォン高方向に進んだので、結果的に助かったわけです。

次の発言も要注目です。

「当局の為替介入は自国通貨の価値下落を遅らせ、投資家が新しい現実に適応する余地を与えることができた」

「当時、ドル高が世界共通の一般的な現象だったため、新興国の通貨安に対するスティグマ効果も少なかった」

韓国の外為当局がとった為替介入は遅滞戦術であって、それには成功したと評価しています。また、ドル一強によるウォン安で、ドル以外の通貨は軒並み安くなったため、ウォンが目立って下がったわけではなかったので助かった――と正直に述べています。

確かに、当時に「新興国通貨はもう駄目だ」というレッテル貼りの認識が高まっていたら、それに巻き込まれたウォンはどうなったか分からなかったでしょう。

Money1でも何度もご紹介したとおり、過去の通貨危機水準までウォン安が進行しましたが、それはドル強ゆえのことで、(当時は)韓国経済のファンダメンタルズに対する不安からのウォン安ではありませんでした。不思議なウォン安急進だったのです。

だからこそ、李総裁も「ドル流動性スワップなんかいらないってば」という態度を取っていたのです。結果からいえば、李総裁の見立ては正しかったのです。

ただし、ドルが弱い方向に動く中で、ウォン安が進行するなら、それは今度こそ韓国経済独自の問題となります。

(柏ケミカル@dcp)

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