韓国では現在「物流大乱」と呼ばれる状況が続いています。コンテナ船、コンテナ不足による輸出の滞りが最も問題なのですが、今度は「陸」です。
陸路の荷物輸送に欠かせない「尿素水」が底を尽きかけているのです。
「尿素水」はディーゼルトラックで必要
一般にはあまり知られていないかもしれませんが、トラックやバスなどのディーゼル機関で動く大型自動車には尿素水が必要です。これは、排気ガスに含まれる有毒物質を浄化するために用いられます。
韓国でも環境基準が強化され、選択触媒還元脱硝装置(SCR:Selective catalytic reductioの略)が装備されており、尿素水は還元剤として使われます。
そのため、尿素水がないと荷物の運搬に用いられるトラックが動かせなくなるのです(環境基準を無視すればOK)。トラックが使えなくなると、当然物流が止まります。
尿素水が枯渇しそうな危機的状況
韓国では81万1,932トンの尿素を輸入し(2019年末時点)、このうち66%が中国からのものです。
中国:66%
インドネシア:14%
カタール:11%
バーレーン:4%
サウジアラビア:3%
ところが、中国がこの輸出に制限をかけたのです。もともと中国では石炭からアンモニアを抽出し、ここから尿素を生産していたのですが、読者の皆さんもご存じのとおり、石炭不足によって石炭価格が急騰。
原材料が入手困難になったため、中国は自国内の需要をまず満たすために、輸出貨物検疫(CIQ)を義務付けました。要は国外に出にくくしたのです。
そのため、韓国では尿素水が枯渇の危機に瀕しているというわけです。
韓国では、尿素を輸入して尿素水を生産するメーカーはあるのですが、尿素自体を生産する企業はすでにありません(2013年に消滅)。中国との価格競争に敗れたためです。
ですので、よそから輸入するしかないのです。
韓国政府では業界の窮状を受け、すでに中国政府に協力を要請している、とのこと。韓国メディア『毎日経済』の報道では「在庫は2カ月」としています。
さて、底をつく前になんとかなるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)